「何故、水でそれほど儲かるのか」と不思議に思われるかも知れない。まさか“水商売”というわけではあるまいが、実際には株価が急上昇を遂げている企業の場合、水を我々の日常生活にとどまらず農業、工業、健康、医療産業等に欠かせない技術の対象として研究開発を重ねており、その成果が世界の投資家から注目と期待を集めているわけである。
また、投機目的の動きもある。
水資源の枯渇に着目した、世界のウォーター・ヘッジファンドが続々と誕生している。
日本は資源のない国だといわれているが、実は森林と水に恵まれた有数の資源国である。水関連企業の株価は急騰を続けている。2001年以来、世界の大手水関連企業、通称「ウォーター・バロンズ」の株価は平均して150%を超える値上がりを記録している。そしてそのような中、水資源の枯渇に着目したウォーター・ヘッジファンドが続々と誕生している。
水の希少価値に注目したヘッジファンドの台頭
水は大きな富を生む希少資源になりつつある。
そこに注目したウォーター・ファンドが相次いで組成されるようになった。わが国でも野村アセット・マネジメントが「グローバル・ウォーター・ファンド」を募集したところ、瞬く間に1000億円を超えるお金が集まり、募集を早めに切り上げざるを得なくなったほど。この人気にあやかり日興コーディアルや三菱UFJ投信など日本の金融機関も、このところ水に特化した企業を組み合わせたファンドを作る動きを加速させている。
世界で急成長を遂げているウォーター・ファンドだが、2007年12月の時点で、本数にして27本、総額では2000億ドルを超える規模に膨らんでいる。ウォーター・ファンドの本数も相次いで増えており、当然のことながら投資残高も拡大を続けている。対前年比で53%増という急ピッチである。しかも毎年のように記録を更新している。2007年に世界を金融パニックに陥らせたアメリカ発のサブプライムローン危機や原油高の影響で、より高いリターンを追求する世界のマネーは天然資源や穀物などコモディティー(商品相場)にシフトするようになった。
そのような流れを受け、水という生命の維持に欠かせない資源にあらためて注目が集まっている。世界的に水資源の枯渇が問題となる中で、いかに安定的な供給を確保するのか。汚染された水の浄化技術やリサイクル、リユースを可能にする技術を有する企業や研究機関に対して、世界の投資マネーが一斉に群がるようになってきた。世界のウォーター・バロンズや水関連企業は、行き場を失った世界の投資マネーの受け皿として過去類を見ないほどの活況ぶりを呈している。
当然の結果であろうが、水関連企業の株価は急騰を続けている。2001年以来、世界の大手水関連企業、通称「ウォーター・バロンズ」の株価は平均して150%を超える値上がりを記録している。これは同じ期間の一般銘柄と比べると、3倍以上の株価高騰ということになる。代表的なウォーター・バロンズといえばイギリスのテームズ・ウォーター、フランスのスエズやベオリアといったところで、この3社が「ウォーター・バロンズ御三家」と呼ばれている。
水源利権の争奪戦も拍車
こういった水関連の企業を過去20年間の株価の推移で見てみると、おおよそ30倍にまで株価が膨張していることが明らかになる。
しかし、それだけでは買収を止めることはできない。個人所有の森林があるからだが、諸外国のように、外国人や外国法人の土地所有について地域を限定したり、事前許可制をとるなどの制限を設ける必要性がある。
世界の水の需要状況では、先進国では健康や美容などへの関心の高まりから、良質な水へのニーズが旺盛になりつつある。一方で、発展途上国では人口増加や経済発展によって、生活用水が不足する事態が起きている。
経済産業省が発表した2008年度の通商白書によると、安全な水の供給を欠いている人口は、世界で11億人とされ、安全な水が無いために、毎日4500人以上の児童が亡くなっているという。水不足は今後更に深刻化するとみられており、2025年には世界で55億人の人間が水不足に陥ると予想されている。
日本の森林を買収する外国人の中でも、特に中国人の動きが目立っている。中国には長江や黄河などの大河があり、豊富な水を有する国のイメージがある。しかし、中国の年間平均降水量はおよそ660ミリで、1700ミリ近い日本の半分にも満たない。さらに、長江や黄河にはそれにつながる支流が少ないため、大地に水が行き渡りにくいといった欠点もある。そのため、慢性的に水不足の問題を抱えている。また、中国の国土は平地が多いため、河川の水の流れが遅く、汚れた水が滞留しやすい。河川の汚染が進む中国では、汚染が水不足に拍車をかけているといっていい。中国人が日本の森林の買収に動く背景には、こうした事情がある。
日本は資源のない国だといわれているが、実は森林と水に恵まれた有数の資源国である。そのことに気付いた外国人は、今後も日本の森林の買収を続けるとみられている。
これに対し林野庁は都道府県にヒアリングを開始し、情報収集に努めているという。しかし、それだけでは買収を止めることはできない。諸外国のように、外国人や外国法人の土地所有について地域を限定したり、事前許可制をとるなどの制限を設ける必要性がありそうだ。