森林保全の動向(1)
森林は、山地災害の防止、水源の涵(かん)養、生物多様性の保全等の公益的機能を有しており、適正な利用を確保するとともに、自然災害、病虫獣害等から適切に保全することにより、これらの維持及び増進を図ることが重要である。
以下では、保安林等の管理及び保全、治山対策の展開、森林における生物多様性の保全並びに森林被害対策の推進について記述する。
(1)保安林等の管理及び保全
(保安林制度)
公益的機能の発揮が特に要請される森林については、農林水産大臣又は都道府県知事が「森林法」に基づき「保安林」に指定して、立木の伐採や土地の形質の変更等を規制している(*53)。保安林には、「水源かん養保安林」をはじめとする17種類の保安林がある。平成25(2013)年度には、新たに約3万haが保安林に指定され、同年度末で、全国の森林面積の48%、国土面積の32%に当たる1,212万ha(*54)の森林が保安林に指定されている(資料 II -20)。特に近年は、集中豪雨等による山地災害が多発していることも踏まえ、「土砂流出防備保安林」、「土砂崩壊防備保安林」等の適正な配備を進めることとしている。
「京都議定書」のルールでは、天然生林の森林吸収量を算入する条件として、保安林を含む法令等に基づく保護措置及び保全措置が講じられている必要がある。このため、適切な保安林の管理及び保全は、森林吸収源対策を推進する観点からも重要である。
(*53)「森林法」第25条~第40条
(*54)それぞれの種別における「指定面積」から、上位の種別に兼種指定された面積を除いた「実面積」の合計。
(林地開発許可制度)
保安林以外の森林についても、土石の採掘、工場用地や農用地の造成等の開発によって、森林の有する多面的機能が損なわれないようにすることが必要である。
このため「森林法」では、保安林以外の民有林について、森林の土地の適正な利用を確保することを目的とする林地開発許可制度が設けられている。同制度では、森林において一定規模を超える開発を行う場合には、都道府県知事の許可が必要とされている(*55)。
平成25(2013)年度には、2,334haについて林地開発の許可が行われた。このうち、土石の採掘が1,066ha、工場・事業用地及び農用地の造成が995haなどとなっている(*56)。