新居浜魚のへい死
昭和47年~
~昭和57年
昭和58年~
平成5年
愛媛県燧灘魚貝類大量死亡
燧灘魚貝の大量死
昭和四七年九月、愛媛県燧灘海域のうち川之江市から土居町までの東部海域と新居浜市から東予市までの西部海域一円の海岸線約六五㎞にわたる広範囲で、沿岸性のチヌ・カレイ・キス・ボラ・スズキ・メバルなどの魚類に加え、同海域の重要根付資源となっているバカガイ・アサリが一時に大量へい死する事態が発生した。大量死が起こる前後の漁況については、東部海域と西部海域に大別することができる。
この概要については表8-12のとおりであるが、東部海域では九月三、四日ころよります網・磯建網の漁獲物のへい死率が高くなり、西部海域ではこれより四、五日遅れ七日ころから魚類のへい死が起こり、西条のバカガイはさらに二日位後の九日頃から大量死が発生している。そして大量死亡が起こる数日前に大量漁獲がみられたことは両海域共通の特異現象であった。
今回の魚貝類の大量死亡による漁業被害をみると、魚類ではキス・カレイ・メバル・ボラ・チヌなどの沿岸性の魚で、被害総量は約八七〇tと推定され、関係地先は川之江市から西条市に及んでいる。貝類ではアサリ・バカガイが主として被害をうけたが、その該当地区は新居浜市・西条市・東予市にわたる広範囲に及び、これに伊予三島地区のトリカイの被害を加えると、その総被害量は約一万六、六〇〇tにも及ぶ莫大な量となり、前記の魚類とこれら貝類との被害総額は一七億八、〇〇〇万円余に達するものと推計されたのである。
県では、この大量死亡原因を早期に究明するため、学識経験者四名による調査委員会を設置した。この調査委員には愛媛大学教育学部助教授河渕計明・広島大学水畜産学部助教授笠原正五郎・水産庁南西海区水産研究所環境研究室長村上彰男・愛媛大学工学部教授樋口明生の四氏を委嘱し、関係機関の調査で得た資料をもとにしてその因果関係の解析がなされた。
そして昭和四七年一二月に、同調査会から魚貝類大量死亡原因に関する調査報告書が県に提出されたのである。これを要約すると、直接原因は海域下層水中の溶存酸素が極度に少なくなったためと思われる。そしてこれを誘発した間接要因は夏期における集中豪雨により表面水が低塩分化し、塩分成層を形成したうえ、これと水温成層の形成時期が重なったため、上層水と下層水との交流がほとんど行われなくなったため、底層水への空中からの酸素補給が完全にたたれ、無酸素に近い状態となった。さらに一年で最も高水温の時期に遭遇していたため底泥中の有機物の分解作用が活発となり酸素を大量に消費したためとしている。
さらに本海域が停滞水域であり、自然条件の下でも水質、底質の悪化を招きやすいうえに沿岸からの人為的汚染負荷が、質、量ともに莫大であるので今後流入汚染負荷の減少と蓄積負荷の除去に注力し、漁場環境の保全に格段の努力を払う必要があることを指摘した。