スラグ類に化学物質評価方法を導入する指針について
-総合報告書を策定-
平成24年3月21日
経済産業省 産業技術環境局
産業基盤標準化推進室
概 要
環境安全品質の管理は、あらゆる循環資材に必要な共通の課題であるとの認識から、「コンクリート用骨材又は道路用等のスラグ類に化学物質評価方法を導入する指針に関する検討会(委員長:大迫政浩、(独)国立環境研究所)」は、スラグ類に留まらず、スラグ類を含めたあらゆる循環資材に共通化できる環境安全品質とその検査方法を導入するための基本的な考え方を総合報告書として取りまとめました。この報告書は、平成24年3月13日に開催された「日本工業標準調査会・土木技術専門員会(委員長:河野広隆、京都大学)」に報告されました。
なお、コンクリート用及び道路用のスラグ類のJISへ環境安全品質及びその検査方法を導入するための指針【付録A2及びA4】は、先の「土木技術専門委員会」及び「建築技術専門委員会(菅原進一、東京理科大学)」の審議を経て、平成23年7月12日付けで策定されたものです。今般、利便性を高めるために、それらの解説も新たに作成しました【付録A3及びA5】。
また、これらの指針は、「建設分野の規格への環境側面の導入に関する指針」(平成15年3月28日議決)【付録A1】の附属書に位置づけられています。 循環型社会と低環境リスク社会が両立した社会システムづくりに資することが期待されます。
詳 細
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循環資材の環境安全品質及び検査方法に関する基本的考え方 (1) 最も配慮すべき曝露環境に基づく評価: 環境安全品質の評価は,対象とする 循環資材の合理的に想定しうるライフサイクルの中で,環境安全性において 最も配慮すべき曝露環境に基づいて行う。 (2) 放出経路に対応した試験項目: 溶出量や含有量などの試験項目は,(1) の 曝露環境における化学物質の放出経路に対応させる。 (3) 利用形態を模擬した試験方法: 個々の試験は,試料調製を含め,(1) の 曝露環境における利用形態を模擬した方法で行う。 (4) 環境基準等を遵守できる環境安全品質基準: 環境安全品質の基準設定項目と 基準値は,周辺環境の環境基準や対策基準等を満足できるように設定する。 (5) 環境安全品質を保証するための合理的な検査体系: 試料採取から結果判定 までの一連の検査は,環境安全品質基準への適合を確認するための「環境 安全形式検査」と,環境安全品質を製造ロット単位で速やかに保証するため の「環境安全受渡検査」とで構成し,それぞれ信頼できる主体が実施する。 (1) 最も配慮すべき曝露環境に基づく評価 まず,循環資材が備えるべき環境安全品質は,循環資材が置かれる曝露環境によって異なる。すなわち粒状や塊状のまま露出した状態で使用する場合と,コンクリート等によって成形固化して使用する環境では,前者の方がより高い環境安全品質が必要である。したがって,循環資材が出荷される前の段階であっても,その循環資材の利用,再利用,処分といったライフサイクルの中で最も危険な状態を基準として評価できれば, その循環資材のライフサイクルにおける環境安全品質を保証できる。このように,「最も配慮すべき曝露環境」の決定は基本的考え方の起点となるので,対象とする循環資材のライフサイクルを十分に調査検討し,慎重に決定しなければならない。ここで,極めて希な用途を「合理的に想定しうるライフサイクル」の範囲に含めることは,全体の利用が極端に阻害される恐れがあることから避けることが適当である。環境影響が懸念される極めて希な用途は,使用禁止等の他の適切な管理を行うべきである。 「最も配慮すべき曝露環境」の決定の仕方として,例えばコンクリート用骨材では次のようになる。コンクリート構造物はコンクリートとしての利用を終えると,破砕され,路盤材等の他の用途へ再利用される場合が多い。したがって最初のコンクリート構造物の状態と再利用後の様々な再利用の状態の中で,環境影響が最も大きいと判断される状態を「最も配慮すべき曝露環境」に決定することとする。別の例として,循環資材が港湾のコンクリート構造物や高規格道路用盛土等のように再利用が想定されない用途の場合は,その用途自体を「最も配慮すべき曝露環境」とすることになる。また,利用場所や利用量等の情報管理が行われる場合は,利用後の撤去や再利用における環境安全品質の管理も着実になされるので,初回の用途を「最も配慮すべき曝露環境」とする。 なお,成形固化されたものの評価方法に対する考え方には,従来,利用推進と環境安全品質確保の両面からの意見があった。利用推進の面からは,使用中の状態を考慮して成形体のままで評価すべきというものであり,環境安全品質確保の面からは,成形固化物であっても長期的な細粒化を前提として,土壌の溶出試験方法である平成3年環境庁告示第46号に準じて2 mm以下に粉砕して評価すべきというものである。 しかしながら,前者は利用が終了した後に破砕されて再利用される可能性に対する評価が不十分である懸念が,また,後者は全て2 mm以下に粉砕されることは過剰なものであり循環資材利用を過剰に阻害する懸念がそれぞれある。一方,「基本的考え方」では撤去後の再利用や処分も含めたライフサイクルを調査し,その中で環境影響が最も懸念され,最も配慮すべき状態に基づいて評価することとしており,両意見に対して合理的な回答を与えるものである。 (5) 環境安全品質を保証するための合理的な検査体系 環境安全品質は (2) から(4) に基づく検査(「環境安全形式検査」という)によって保証するが,利用模擬試料の調製等には多くの時間と労力を要するため,製品検査により適した方法として,製品ロット単位で迅速な検査が可能な「環境安全受渡検査」を設定することとする。 環境安全受渡検査は,環境安全形式検査に合格したものと同じ条件で製造された循環資材を単体で適用することを基本とし,環境安全形式検査に合格したものと同等の品質であることを保証する。これを行うために,環境安全受渡検査判定値を適切に設定する。 また,それぞれの検査の信頼が保たれるように,検査の頻度や各検査の実施主体を適切に設定する。 3-1-4 地盤改良材,その他土木材料 参考として,地盤改良材及びその他土木材料の考え方を以下に示す。 地盤改良材の場合,一部の浅層地盤改良を除いて,再利用が想定されない利用となることから,地盤としての状態を「最も配慮すべき曝露環境」とするのが適当である。一部の浅層地盤改良の場合は再利用の可能性や土壌汚染対策法適用の可能性を検討する必要がある。 その他の土木材料についても同様に,基本的に再利用が想定されないので,これを「最も配慮すべき曝露環境」に決定するのが適当である。 ただし,いずれの場合においても再利用が想定される場合は,再利用後の状態を含めて「最も配慮すべき曝露環境」を改めて検討する必要がある。 |
A1_建設分野の規格への環境側面の導入に関する指針.pdf |
A2_附属書I_コンクリート用スラグ骨材に環境安全品質及びその検査方法を導入するための指針(本文).pdf |
A3_附属書I_コンクリート用スラグ骨材に環境安全品質及びその検査方法を導入するための指針(解説).pdf |
A4_附属書II_道路用スラグに環境安全品質及びその検査方法を導入するための指針(本文).pdf |
A5_附属書II_道路用スラグに環境安全品質及びその検査方法を導入するための指針(解説).pdf |
〇(本件に係る問い合わせ先)
産業技術環境局 基準認証ユニット 産業基盤標準化推進室 土木担当
電話: 03-3501―1511(内線3423~5)