放射線の管理技術
日本における放射線防護に関する技術的基準の考え方は、国際放射線防護委員会(以下、「ICRP」という。)の勧告を尊重して検討されてきます。平成19 年(2007 年)12 月に、ICRPは、1990 年勧告に代わる2007 年勧告(Pub.103)を公表しており、放射線審議会では、2007年勧告の国内制度等への取入れについて基本部会において放射線障害防止の技術的基準の考え方などの検討を行っています。
・ 放射線防護の3 つの基本原則(下記)は1990 年勧告から引き続き維持されています。
・ 正当化の原則(放射線被ばくの状況を変化させるようなあらゆる決定は、害よりも便益が大となるべきである。)
・ 防護の最適化の原則(被ばくの生じる可能性、被ばくする人の数及び彼らの個人線量の大きさは、すべての経済的及び社会的要因を考慮に入れながら、合理的に達成できる限り低く保つべきである。)
・ 線量限度の適用の原則(患者の医療被ばく以外の、計画被ばく状況における規制された線源のいかなる個人の総線量は、委員会が特定する適切な限度を超えるべきではない。)
線量限度については、ICRP の調査に基づく科学的知見に基づき、職業被ばくと公衆被ば
くの双方について定められており、表2.3 にそれらの勧告値を示す。
くの双方について定められており、表2.3 にそれらの勧告値を示す。
ICRP の定める線量拘束値、参考レベルは、被ばくの種類、個人と社会の被ばく状況等から特徴付け、さらに国、地域の属性を考慮に入れ、国際的な指針等を考慮した最適化プロセスによって2007 年勧告では下記のように策定されています。
・ 1mSv 以下(計画被ばく状況に適用され、被ばくした個人に直接的な利益はないが、社会にとって利益があるかもしれない状況(例:計画被ばく状況の公衆被ばく))
・ 1~20 mSv 以下(個人が直接、利益を受ける状況に適用(例:計画被ばく状況の職業被ばく、異常に高い自然バックグラウンド放射線及び事故後の復旧段階の被ばくを含む)
・ 20 mSv~100 mSv 以下(被ばく低減に係る対策が崩壊している状況に適用(例:緊急事態における被ばく低減のための対策))国内の事業所における労働者の電離放射線被ばくを防止するために労働安全衛生法に基づく「電離放射線障害防止規則」(厚生労働省省令)が定められています。事業者は法を遵守し、確実に労働者の安全を守る義務を有しています。規則の要点を以下に列記します。
・ 放射線の定義と放射性物質の核種、数量と濃度による定義が決められています。
・ 管理区域を標識により明示することが定められています(1.3 mSv/3 月或いは表面密度4Bq/cm2 を超えるおそれのあるとき)。
・ 施設等の線量を限度以下に保つこと(1 mSv/週)。
・ 放射線業務従事者の被ばく限度(100 mSv/5 年+50 mSv/年+(女性)5 mSv/3 月、水晶体:150 mSv/年、皮膚:500 mSv/年)
・ 放射線業務従事者の線量の測定(外部被ばく測定:放射線測定器の装着、内部被ばく測定:1 回/3 月(但し、吸入摂取した時は速やかに))
・ 線量の測定結果の記録(3 月ごと、1 年ごと、5 年ごとの合計を記録します。30 年間保管(放射線影響協会へは5 年後に引き渡し可能)、放射線事業従事者へ通知)
・ 専用の作業室内での作業(非密封な放射性物質取扱作業は専用の作業室内にて作業を行う。作業室の構造は腐食しにくい材質、表面平滑、突起・くぼみがないこと)
・ 空気中の放射性物質濃度、飛来防止措置、専用時具(厚生労働大臣が定める濃度の1/10、飛来物による汚染がないように幕・壁の設置、専用用具の利用)
・ 汚染検査(作業室内の汚染検査(1 回/月)と除染、作業室から退去するときの汚染検査と除染)
・ 貯蔵施設(外部と区画された施設、施錠、貯蔵標識)
・ 焼却炉(気体が漏れない・灰が飛散しない構造、焼却炉標識)
・ 保管廃棄施設(外部と区画された施設、施錠、保管廃棄標識)
・ 保護具、作業衣(放射性物質濃度に応じた保護具着用、専用の作業衣)
・ 作業環境測定(作業室の放射線量率:1 回/月測定、5 年間保存、作業室の放射性物質濃度:1 回/月測定、5 年間保存)
・ 健康診断(管理区域常時立ち入り者:指定時、1 回/6 月、健康診断の記録:30 年間保存(5 年後に専門機関へ移転可能)、作業者へ健康診断結果の通知、健康診断結果の報告:所轄労働基準監督署長あて)