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Channel: 持続可能な開発(水・土・廃棄物)
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放射性物質(セシウム、ストロンチウム)の物性

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放射性物質(セシウム、ストロンチウム)の物性

 放射性物質を含む廃棄物の処理・処分において、放射性セシウムやストロンチウムがガスとして大気へ拡散するのか、固体となり灰に付着するのか、さらに雨水と接触して浸出水中へ溶け出すのか、といった挙動が安全性の確保の観点から最も重要になります。
 それらの挙動を理解もしくは予測するには、それらの蒸気圧や水への溶解度などの物理化学的性状(以下、物性)が必要となります。しかしながら、放射性物質としてのCs-134 および-137、Sr-90 そのものの物性情報は入手できません。そこで、安定同位体のデータを収集し、物性について紹介します。ただし、それらの元素は表3.1 の周期律表ではそれぞれアルカリ金属(1A)とアルカリ土類金属(2A)に属するため、環境または処理において原子よりはむしろ電解質(塩)として存在する可能性が高いと予想されます。
 
 そこで、それらの元素から構成されるCsI やCsCl 等の塩や同族列の元素(Na やCa 等)とその塩についても併せて紹介します。
 
 
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 物性データとして、融点(Tf)、沸点(Tb)、蒸気圧(pv)、イオン化エネルギー(IE)、電子親和力(EA)、水への溶解度(Sw)を収集しました。
 Tf、Tb、pv についてはYaw のChemicalProperties Handbook1)から、IE とEA についてはNIST のWeb ページから、Sw についてはLinke のSolubilities:Inorganic and Metal-organic Compounds; A Compilation of Solubility Datafrom the Periodical Literature2)からデータを引用しています。また、物性データに加えて、蒸気圧データから大気へ揮発する可能性を、IE とEA から環境へ放出された場合のイオン化の可能性を、さらに、水への溶解度をから水系への溶解性を考察します。
 

 表2 に元素および塩の純物質のTf およびTb を、図3.2 には蒸気圧データを示します。
 Cs原子そのものは、Li(リチウム)、K(カリウム)、Na(ナトリウム)等のアルカリ金属に属し、Na のようにTf やTb は低く、蒸気圧は相対的には高い傾向にあり、他のアルカリ金属に比較すれば、揮発しやすい物質であるといえます。しかし、Cs はハロゲン(F、Cl、Br、I)化するとTf とTb は500~600℃高くなります。いずれにしても、常温に近い温度では、気体として存在する可能性はほぼないと言えます。ただし、高温下における蒸気圧は他のアルカリ金属に比較して高いため、高温下における揮発性について留意が必要です。

 Sr はMg(マグネシウム)やCa(カルシウム)等のアルカリ土類金属に属し、アルカリ金属に比べてTb とTf の値は700℃程度高いものの、蒸気圧曲線から高温下では大気中へ揮発する可能性があると考えらます。しかし、Cs と同様に、SrCl2 等のハロゲン化塩となると、Tb とTf がさらに高くなるため、大気へ揮発する可能性は低いと予想されます。

 Cs とSr はイオン化エネルギーが低く、陽イオンになり易く、特に、Cs の反応性は非常に高く、一度大気へ放出されれば容易に酸化されると考えられます4)。したがって、環境中では、酸素、水、他の元素や化学物質と反応し、塩化物、炭酸塩、硝酸塩などの塩類もしくはイオンとして存在するのではないかと推察されます。
 
 
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 Cs およびSr の塩類の水への溶解度を表3.3 に示します。CsCl などのCs の塩類の溶解度は非常に高く、浸出水などの水環境系へCs+イオンとして溶解する可能性が極めて高いと予想されます。また、Sr もF 以外のハロゲン化塩についてはやはり溶解度が高く、水環境系へSr2+イオンとして溶解しているといえます。しかし、炭酸塩(SrCO3)、硫酸塩(SrSO4)、フッ化物(SrF2)の場合は溶解度が桁違いに低くなり、水環境系への溶解性は低くなります。

 表3.3 にて水への溶解度のデータを示しましたが、放射性同位体の環境濃度は、例えば、Cs-137 の10Bq/L は、つまり、2.3×10-14mol/L と極めて微量であることから、大気から水系に降下した元素およびその塩類は、すべてイオン化して溶解するものと考えられます。
 
 ただし、イオン化したCs は土壌等の他の媒体へ吸着することもあります。吸着力は吸着媒体
に依存するので、吸着力が強い場合には水環境中へ溶出する量がかなり少なくなると予想
されます。
 
 
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