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放射性セシウムの溶出特性

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放射性セシウムの溶出特性

4.1 はじめに
 一般廃棄物焼却灰、下水汚泥焼却灰、浄水発生土、災害廃棄物、土壌等に移行した放射
性セシウムの環境中での挙動として、溶出特性1について検討を行いました。

4.2 試験方法
4.2.1 JIS K0058-1 有姿撹拌試験
 試料を有姿のまま容器に入れ、10 倍量 (L/kg) の純水を入れた後に上部の液相部分をプロ
ペラで撹拌するJIS K0058-1 有姿撹拌試験1)(図4.1)により、表4.2 から4.6 に示す試料の
評価を行いました。溶出操作時間は6 時間です。ろ過は0.45 μm のメンブレンフィルターを
用いて行い、ろ液のpH と電気伝導度 (EC) を併せて測定しました。また、放射性Cs 含有
量の測定を別途行い、JIS K0058-1 有姿撹拌試験における溶出率を求めました。
 
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4.2.2 逐次抽出試験2)
 JIS K0058-1 有姿撹拌試験における溶出率は、一般廃棄物焼却飛灰が他の試料よりも際だって高いことが把握されました。この要因を検討するために、抽出能力の異なる溶媒で試料を逐次抽出する「逐次抽出試験」を適用し、放射性Cs 等の化合物形態の差異を推察しました。
 試料は、一般廃棄物焼却主灰、一般廃棄物焼却飛灰、下水汚泥焼却灰の各1 試料を125 μm 以下に粉砕したものを適用しました。試験方法は、参考文献2) に準じて設定しました。
 
 試験方法の概要を表4.1 に示します。逐次抽出試験の結果を解釈する際の注意点ですが、
逐次抽出試験は土壌試料を対象として開発された方法なので、特に焼却灰への適用においては、各画分で抽出されたものの化学形態が、各画分の名称と合致したものか十分に確認
されていないことが挙げられます。
 
 ただし、各画分の化学的安定性は各画分の化学形態と同等程度と推察することはできると思われます。なお、焼却灰等の熱処理物にはF5 有機物・硫化物態がほとんど存在しないことから、F5 は土壌のみ適用することとしました。
 
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1 放射性Cs の溶出濃度測定値は重量当たり (Bq/kg) で得られるが,溶出液の密度を1 kg/L
と仮定し,一般に溶出試験で用いられる体積当たり (Bq/L) で表記している。
 
 
 
 
4.2.3 迅速シリアルバッチ試験
 一般廃棄物焼却主灰と焼却飛灰処理物の溶出パターンを検討するために、溶出試験を行いろ過後の試料に新たに溶媒を加える操作を繰り返し行う「シリアルバッチ試験」を適用しました。
 シリアルバッチ試験の概念図を図4.2 に示します。溶媒交換のタイミングは1 日以上とするものなど様々提案されていますが、本件では、初期の溶出パターンに重点を置くために、迅速法として、溶媒の交換を1 時間ごとに行い5 つの溶出液を得ました。
 溶媒は蒸留水のみを用いました。その他の条件は、液固比10 L/kg、120 rpm 程度の緩やかなプロペラ撹拌とし、試料は30 mm 以下に粗く破砕したものを使用しました。
 

4.2.4 迅速累積バッチ試験
 放射性Cs が溶出後、廃棄物層等をさらに下方へ浸透していくにしたがいさらに放射性Csが溶出することによって高濃度化する現象を検討するために、ろ過して回収された溶出液に新たに試料を投入する操作を繰り返す「累積バッチ試験」を適用しました。累積バッチ試験の概念図を図4.3 に示します。最初の操作で得られた溶出液に新しい試料を投入して溶出操作を繰り返すことにより、溶出液の濃度は次第に高くなり、場合によっては平衡濃度に達すると思われます。 
 ただし、毎回、溶出液の分析や、ろ過後の残渣側への溶出液の残留のため、次回に使用できる溶出液量は次第に減少することになり、繰り返しできる回数には限界があることになります。試料は迅速シリアルバッチ試験と同じ焼却主灰と焼却飛灰処理物を適用しました。溶媒は蒸留水を用い、液固比5 L/kg にて毎分50 回の緩やかな反復振とうを行いました。
 結果を迅速に得るために、1 回の溶出時間は1 時間とし、ろ液に新たな試料を加えて溶出操作を再度行い、これを繰り返して5 つの溶出液を得ました。
 
 
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4.3 試験結果
4.3.1 JIS K0058-1 有姿撹拌試験結果
 試験の結果、Cs134 とCs137 は含有量、溶出濃度ともにCs137 がやや高く、この傾向は試料間で大きな違いは見られませんでした。このことから、以下ではCs134 とCs137 を単純合計した値に基づいて結果を述べたいと思います。
(1) 一般廃棄物焼却灰等(表4.2)
 焼却主灰中の含有量は97.6~6800 Bq/kg と非常に幅広い値でした。このうち、主灰B~Eは溶出濃度が低く、検出限界以下でしたが、主灰M は85 Bq/L の溶出濃度が検出されました。
 溶出率を計算すると、主灰M は5.6%でした。主灰B は検出限界値を用いて計算すると、8.2%未満になりました。主灰C~E は含有量と溶出濃度の両方が低いため、溶出率として可能性のある上限値は比較的高い値となっています。焼却飛灰は、含有量は2400~32400 Bq/kgと幅広いのですが、含有量にほぼ比例した溶出濃度が得られており、溶出率は64.1~89.1%という高い値でまとまっていました。
 
 飛灰処理物とは、焼却飛灰にセメントを添加したもので、処理物B は成形固化体、他は最大経が数10 mm 以下の粉体~団粒の混合物です。どの処理物も、含有量の値が処理前の焼却飛灰よりもやや低いのは、セメント等の混合物や加湿調整に用いた水分によって元に占める焼却飛灰の割合が低下したためと思われます。

 溶出率は処理物B を除いて66.4~88.1%で、焼却飛灰と飛灰処理物に差異はほとんど見られ
ませんでした。なお、処理物B について30 mm 以下、ならびに2 mm 以下に粉砕してJISK0058-1 有姿撹拌試験を適用した結果、溶出率は77.2~79.1%であったことから、成形固化体とすることで溶出を抑制できる可能性が示唆されました。溶融スラグは含有量、溶出濃度ともに低い結果となりました。

(2) 下水汚泥焼却灰等(表4.3)
 下水汚泥焼却灰、同・混練物、下水汚泥溶融スラグ、ばいじん(下水汚泥溶融飛灰)については、含有量は4400~35000 Bq/kg と大きく異なるものの、溶出濃度は低く、また、溶出率は3.4%未満でした。特に、検出された下水汚泥焼却灰1 試料とばいじん1 試料はそれぞれ0.9%、0.8%という非常に低い値でした。

(3) 浄水発生土(表4.4)
 浄水発生土は3 施設から採取した試料を対象としました。含有量は6130~100800 Bq/kgと高濃度でしたが、溶出濃度はいずれも検出限界(約16 Bq/L)未満で、溶出率は2.6%未満でした。
(4) 災害廃棄物(表4.5)
 採取した試料では、大谷石の含有量が30600 Bq/kg で最も高く、セメントブロック、スレート瓦、木材、トタン、塩化ビニール管は6460~13850 Bq/kg という値でした。一方、溶出濃度は含有量の大小にかかわらず、いずれも検出限界(約16~19 Bq/L)未満であり、溶出率は2.8%未満でした。

(5) 土壌(表4.6)
 採取した土壌2 試料の含有量は約14000~17000 Bq/kg であったのに対して、溶出濃度は検出限界(約17 Bq/L)未満であり、溶出率は1.2%未満という低い結果でした。
 以上を総括すると、一般廃棄物焼却飛灰はセメントによる固化処理の有無によらず、溶出率は64~89%であることがわかりました。そのため、含有量が高い場合は高濃度で溶出する可能性が高いと考えられます(ただし成形固化体とし、これを破砕しない場合の溶抑制効果は期待できる結果が得られました)。
 一般廃棄物焼却主灰は、溶出濃度は低く、溶出率は確認できたもので5.6%という結果でした。一方、下水汚泥焼却灰等、浄水発生土、災害廃棄物、及び土壌は、含有量は高いものでも溶出液にはほとんど検出されず、溶出率は非常に低い傾向にあることがわかりました。
 
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