10年以上前に一度真冬の北京に旅行に行った時、旅行会社のパンフレットには、
中国共産党の批判はしないように、天安門事件のことは絶対に中国では言わない
ようにという注意が書かれていました。
真冬の万里の長城は、耳が千切れそうなほど寒かったし、乾燥した大地をみて
日本とは気候風土が違うのだと実感しました。
天安門に登って毛沢東・周恩来・小平ら建国の父の巨大な壁画を見て、
あの天安門広場を見たときに、この広大な中国を統治するには、私達の常識や
民主主義などでは治まるわけがないと直感的に感じました。
中国が良いとか悪いとかの問題ではなく、中国は、日本とは政治体制が全然違う
別の国なのです。それに同じアジア人でも、家族や親族を大事にするのは同じ
ですが、基本的には個人主義で欧米人に近い考え方をするので、日本人から見ると
自己主張が激しく見えます。
2007年の旧正月前に香港に行きましたが、中国本土からの観光客でごったがえして、
両手にいくつも買い物袋を提げて、その目覚しい経済発展は目を見張るものがあり、
日本人観光客なんてすっかりかすんで、中国本土のパワーを実感しました。
ちょうど行きの飛行機で読もうと、空港の本屋さんでたまたま買った本が
『「今の中国」がわかる本』(沈才彬著 三笠書房)でした。パラパラめくると、
経済だけでなく歴史的背景も書かれていて、ちょっと興味を惹かれたのでした。
沈さんの本によると、
1820年時点での中国は世界最大の経済大国で、1840年のアヘン戦争以降の中国の
近代史は、中国人にとっては、天国から地獄への転落でした。それと対照的に
日本は、明治維新を経て列強諸国と肩を並べるまで目覚しく発展しました。
1894-5年の日清戦争は、中国からすると弱い小国の日本に戦争に負けてしまい、
中国にとっては大きな衝撃だった。こういう中国の転落と対照的な日本の台頭が、
中国人の被害者意識を一層強くさせることになったそうです。
日清戦争では中国は、3億5000万円もの賠償金を支払わされたのに、日中戦争後、
日本の一般国民に負担をかけないためという配慮から、(本来請求する権利が
あったのに)日中友好のためには賠償金を中国は請求することもなかった。
こういう歴史的な経緯も中国人の反日感情の収まらない一因となっていて、
日中戦争から時間があまり経過していないため、靖国問題や教科書問題が
持ち上がる度に中国人の反日感情がエスカレートしてしまうそうです。
この本は、中国人の立場で冷静に中国の近代史が分析されており、彼等の考え方を
理解する上でとても役に立ちました。4年前の本ですが、この本は経済成長や
不動産バブルも予測されており、充実した内容になっていてお勧めです。
2003年にゴールドマン・サックスは、2016年に中国は日本を抜いて世界第2位の
経済大国になると予想しましたが、中国はこれを2010年今年に達成することが
確実となりました。
もちろん中国に問題はたくさんあります。政治の腐敗・不動産バブル・環境汚染・
小数民族問題・人権軽視・著作権無視・バブル経済など。
中国に限らず、アジアに関しては、直ぐにお互い感情的になってしまいがちですが、
好きか嫌いかではなく、地理的な位置は変わらないのですから、ここは隣人として
相手を冷静に分析する必要があります。
もはや日本も世界第2位の経済大国ではありません。
どうしてそうなってしまったかを、私たち日本人は分析する必要があります。
そうでなければ、このままずるずる落ちていくだけです。
世界情勢は刻々と変化していくのですから、中国だけでなく他の国々に対しても、
昔のイメージにとらわれず、リアルタイムで情報を収集して、相手を冷静に分析して
見ていく必要があると思いました。