歴史・迷宮解:日本語は環日本海諸語 米大陸先住民言語とも系統近く
袋小路に入ってしまったと言われている日本語の起源・系統論について、言語学者の松本克己さん(金沢大・静岡県立大名誉教授)が「言語類型地理論」という新しい方法で得た結論を本にまとめ、最近、相次いで刊行した。日本語など日本海の周りの4言語が同じグループに属し、アメリカ大陸先住民の言語ともつながっているという。
松本さんは1929年生まれ。金沢大、筑波大、静岡県立大で教授を務めた。印欧比較言語学や、世界の言語の特徴を調べる言語類型論を専門としてきた。日本語系統論に本格的に取り組んだのは91~93年度に日本言語学会の会長を務めた後で、その成果を『世界言語のなかの日本語-日本語系統論の新たな地平』として07年末に刊行した。
松本説の特徴は、明治時代から100年以上にわたって提起されてきた日本語系統論の諸説とは全く別の方法を用いた点にある。これまでの説が手本にしたのは、印欧語の系統を明らかにすることに成功した比較言語学の手法だった。同系の言語の同源語(語源が同じ語)を比べて、規則的な対応があることを見いだし、元の形を復元する。
しかし、この比較手法では、日本語のように世界のどの言語とも共通する語がほとんどない言語の系統を調べることはできない。適用できるのは、分岐後の年数が5000~6000年までの言語に限られる。
言語年代学によると、一つの祖語から二つの言語が分かれると、共有される語の割合は次第に減少し、6000年で10%を割り、1万年でほぼゼロになる。一方、英語の「woman(女)」と日本語の「をみな」のように、偶然、意味と音が似ている単語は、系統を異にする言語を比べても5%程度はあると言われている。似た単語が数%あるというだけなら、偶然の一致の可能性が大きい。
表面的な文法構造も時代によって変化する。S(主語)、V(動詞)、O(目的語)の配列は、現在の世界の言語のうち、日本語のようなSOV型がほぼ半分、英語や中国語などのSVO型が35%、ポリネシア語などのVSO型が10%余りを占める。ところが、英語が今の語順に変わったのは、たかだか1000年前以降のことだ。語順では系統は決められない。
そこで、松本さんは、遺伝子の型のように、年月を経ても変わらずに受け継がれている言語の特徴を探した。
一つは、日本語のラ行子音に当たる流音のタイプ。日本語では流音は1種類だけだが、英語などヨーロッパの言語ではl(エル)とr(アール)の2種類がある。流音が全くない言語もある。
また、日本語の「人々」「思い思い」のように、語の全体または一部を繰り返す「重複(畳語)」も指標になる。朝鮮語(言語学の韓国・朝鮮語の呼称)、中国語、アイヌ語にもあるが、印欧語族やユーラシア大陸北方のウラル語族、アルタイ諸語にはない。
これら言語の系統を反映しているとみられる8項目の特徴について、20年以上前からパソコンで作っている世界の約6000の言語のデータベースで、地理的分布を調べた。
その結果、ユーラシア大陸の諸言語は、ヨーロッパから中央アジア、シベリア北部にかけてのユーラシア内陸言語圏と、中国からインドシナ半島、オセアニアにかけての太平洋沿岸言語圏の二つに大別された。
太平洋沿岸言語圏はさらに南方群と北方群に分かれ、日本語は朝鮮語、アイヌ語、ギリヤーク語(ロシア沿海州のアムール川下流域からサハリン島にかけて分布)とともに、北方群(環日本海諸語)に入った。
太平洋沿岸言語圏の特徴はベーリング海峡を超えてアメリカ大陸まで広がっている。松本さんはこれを「環太平洋言語圏」と名付けた。アフリカを出た現生人類がユーラシア大陸を移動して太平洋沿岸に到達し、一部が約3万年前に日本列島に、一部が1万数千年前にアメリカ大陸に移住したという、近年の人類学や考古学の成果とも一致する初めての言語学説だ。
毎日新聞 2010年7月28日 東京朝刊
トルコ語は、ユーラシアや中央アジアを中心に東ヨーロッパからシベリアに至るまで広い地域で話されます。
写真の薄青い部分はトルコ語地域です。
以下はWikipediaの百科事典~。
世界の言語
テュルク諸語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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テュルク諸語(テュルクしょご)は、中央アジアを中心に東ヨーロッパからシベリアに至る広大な地域で話される、言語系統を同じくする諸言語の総称である。分布の広大さに比べて言語間の差異は比較的小さく、テュルク諸語全体をひとつの言語、「テュルク語」と見なし、各言語を「テュルク語の方言」とする立場もありえる。
日本語と同じく、目的語や述語に日本語の助詞や助動詞にあたる活用語尾が付着する膠着語で、母音調和を行うことを特徴とする。文の語順も基本的に日本語と同じ主語-目的語-述語になる言語が多い。
歴史学の成果から本来このテュルク諸語を話す人々は中央アジア・モンゴル高原からシベリアのあたりにいたと考えられる。分布がテュルク諸語と隣接するモンゴル諸語、ツングース諸語とはいくつかの言語の特徴を共有するため、テュルク諸語とこれらとをあわせてアルタイ諸語という。アルタイ諸語の相互の系統関係は証明されていないが、もしアルタイ諸語を同一の祖語を共有するアルタイ語族として認める立場に立てばテュルク諸語はテュルク語群と呼ぶべきであり、逆に、将来もしアルタイ語族説が完全に否定されれば、テュルク諸語はテュルク語族と呼ばれるようになるはずである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%A5%E3%83%AB%E3%82%AF%E8%AB%B8%E8%AA%9E
写真の薄青い部分はトルコ語地域です。
以下はWikipediaの百科事典~。
世界の言語
テュルク諸語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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テュルク諸語(テュルクしょご)は、中央アジアを中心に東ヨーロッパからシベリアに至る広大な地域で話される、言語系統を同じくする諸言語の総称である。分布の広大さに比べて言語間の差異は比較的小さく、テュルク諸語全体をひとつの言語、「テュルク語」と見なし、各言語を「テュルク語の方言」とする立場もありえる。
日本語と同じく、目的語や述語に日本語の助詞や助動詞にあたる活用語尾が付着する膠着語で、母音調和を行うことを特徴とする。文の語順も基本的に日本語と同じ主語-目的語-述語になる言語が多い。
歴史学の成果から本来このテュルク諸語を話す人々は中央アジア・モンゴル高原からシベリアのあたりにいたと考えられる。分布がテュルク諸語と隣接するモンゴル諸語、ツングース諸語とはいくつかの言語の特徴を共有するため、テュルク諸語とこれらとをあわせてアルタイ諸語という。アルタイ諸語の相互の系統関係は証明されていないが、もしアルタイ諸語を同一の祖語を共有するアルタイ語族として認める立場に立てばテュルク諸語はテュルク語群と呼ぶべきであり、逆に、将来もしアルタイ語族説が完全に否定されれば、テュルク諸語はテュルク語族と呼ばれるようになるはずである。
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