広域処理の対象になるがれきには、どのような種類がありますか?
倒壊した家屋などから出た柱材や角材などを中心とする木くず、可燃物、不燃物です。
災害廃棄物には、倒壊した家屋や建築物から出た柱材、角材、コンクリート、アルミサッシなどの金属類のほか、畳、ジュータン、衣類、電化製品、家具、布団、マットレスなどの海水をかぶった生活用品、さらには流されてきた樹木や海の中のヘドロなどがありますが、この中で再生利用に適さない木くず、廃プラスチック、不燃物などが広域処理の対象になります。
広域処理されるがれきには、福島のがれきも入っているの?
福島県のがれきは、広域処理の対象ではありません。
広域処理の対象となるのは、岩手県と宮城県で発生したがれき(地震や津波などで発生した廃棄物)です。福島県のがれきは、国の直轄事業・代行事業などにより県内で処理します。
がれきの広域処理は、健康被害の危険性を高めてしまうのでは?
広域処理するがれきは、安全のための基準を満たしたものだけです。
広域処理の対象となるがれきは、放射性セシウムが不検出か、検出されたとしても、処理の過程で健康に影響をおよぼすことのない、低い濃度であることが確認されたものだけです。これらのがれきは、法律※にもとづいて特別な管理が求められる「放射性物質により汚染された廃棄物」とは異なります。環境省では、受入基準や処理方法等を「東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理に関する基準等(平成24年環境省告示第76号)」(告示:http://kouikishori.env.go.jp/news/pdf/20120417_standard.pdf、告示の概要:http://kouikishori.env.go.jp/news/pdf/20120417_summary.pdf)として告示しています。
※平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質により環境の汚染への対処に関する特別措置法
広域処理されるがれきについての、安全性の基準値は?
安全に処分できる基準値として、8,000ベクレル/kgという値を定めています。
8,000ベクレル/kgは、廃棄物を安全に処分するために法律で定められた基準値で、放射性セシウム濃度がこれ以下であれば一般廃棄物と同様の埋立処分ができます。この値はIAEA(国際原子力機関:International Atomic Energy Agency)も認めているもので、埋立処分場で作業する人であっても年間の追加被ばく線量が1ミリシーベルト/年以下になります(1000時間労働を想定)。
廃棄物を燃焼すると放射性セシウムは灰に濃縮されます。この灰が埋立処分できる基準値の8,000ベクレル/kgを確実に下回るように、広域処理の対象となる可燃物の受入基準値も定められています。可燃物の基準値は、焼却する炉の種類によって放射性物質の濃縮率※が異なるため2種類あり、ストーカ炉で焼却する場合は240ベクレル/kg、流動床炉で焼却する場合は480ベクレル/kgです。この基準値をこえなければ、焼却して放射性セシウムが灰に濃縮されても8,000ベクレル/kgを下回るように設定されています。
安全のための基準等を「東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理に関する基準等(平成24年環境省告示第76号)」(告示:http://kouikishori.env.go.jp/news/pdf/20120417_standard.pdf 告示の概要:http://kouikishori.env.go.jp/news/pdf/20120417_summary.pdf)として告示しています。
※濃縮率とは
濃縮率は、焼却処理により放射性物質が全量飛灰に移行すると仮定して算出したものです。濃縮率が高いストーカ式の焼却炉では、焼却炉に対する飛灰の発生量は3%程度であることから、濃縮率は33.3倍と仮定しています。流動床炉の飛灰の発生量は6~7%程度であることから安全側の6%の場合の濃縮率を仮定し、濃縮率を16.7倍と算出しています。
濃縮率は、焼却処理により放射性物質が全量飛灰に移行すると仮定して算出したものです。濃縮率が高いストーカ式の焼却炉では、焼却炉に対する飛灰の発生量は3%程度であることから、濃縮率は33.3倍と仮定しています。流動床炉の飛灰の発生量は6~7%程度であることから安全側の6%の場合の濃縮率を仮定し、濃縮率を16.7倍と算出しています。
がれきを広域処理に送り出す際の、安全性のチェック体制は?
搬出側の自治体で二重のチェックをすることを原則としています。
一つ目は、搬出側の自治体の一次仮置場で、がれきの放射性セシウム濃度を測定します。あらかじめ重機などで十分に撹拌したがれきの山の中で、なるべく均一に分散するように10カ所以上の場所から採取したサンプルで廃棄物の種類ごとに確認します。
二つ目は、搬出側の自治体の二次仮置場からがれきを県外に搬出する際に、がれき全体の周辺の空間線量率※を測定します。がれきがない搬出側の場所の空間線量率よりも有意に高い値が出ていないことを確認します。
※空間線量率とは
対象とする空間の単位時間当たりの放射線量を空間線量率といいます。
災害廃棄物を県外に搬出する際に、線量計で当該廃棄物全体を対象に周辺の空間線量率を測定し、バックグラウンドの空間線量率より有意に高くなるものがないことを確認します。このように災害廃棄物のサンプルの放射能濃度測定に加え、当該災害廃棄物全体の空間線量率も測定することにより、二重に安全性の確認を行います。
対象とする空間の単位時間当たりの放射線量を空間線量率といいます。
災害廃棄物を県外に搬出する際に、線量計で当該廃棄物全体を対象に周辺の空間線量率を測定し、バックグラウンドの空間線量率より有意に高くなるものがないことを確認します。このように災害廃棄物のサンプルの放射能濃度測定に加え、当該災害廃棄物全体の空間線量率も測定することにより、二重に安全性の確認を行います。
がれきを燃やすときに、セシウムなどの放射性物質が大気中に出てしまうのでは?
放射性セシウムは、高性能の排ガス処理装置でほぼ100%除去できます。
がれきを焼却する施設には、排ガス中の微粒子の灰を除去する高性能の排ガス処理装置(バグフィルターや電気集塵機など)がそなわっています。焼却後の排ガスは冷却室で冷やされることにより、放射性セシウムが微粒子の灰に付着するので、排ガス処理装置で除去することができ、大気中への放射性セシウムの放出を防ぐことができます。セシウムについて、バグフィルター付きの焼却炉で99.92~99.99%、電気集じん機付きの焼却炉で96.65~99.62%の除去率を確認しています。実際に放射性セシウムを含む廃棄物の焼却が行われている多くの施設における測定の結果、排ガス中の放射性セシウムの濃度は不検出または極めて微量という結果が出ています。
バグフィルターってなんですか?その性能についても、くわしく教えてください。
バグフィルターとは、焼却施設の排ガスを大気に放出する前に、排ガス中の微粒子を除去する装置です。
排ガス中の灰の平均的な大きさは数10ミクロンです。バグフィルターは0.1ミクロンレベルまでの微粒子を除去可能な装置であり、ほぼすべての灰を除去することができます。
セシウムの沸点は約650℃なので、がれきを燃やすと、がれきに含まれているセシウムは気体になって排ガス中に含まれます。ただし、排ガスはバグフィルターの手前で200℃以下に冷やされるため、排ガス中のセシウムは気体から固体に戻り、排ガス中の灰に付着します。この微粒子の灰がバグフィルターで除去されるため、大気中へのセシウムの放出を防ぐことができます。
静岡県島田市が2月に行った岩手県山田町の災害廃棄物(木くず)の試験焼却の結果について、「10万ベクレルが行方不明」「バグフィルターによる放射性セシウム除去率50~60%」といった指摘がありますが、本当でしょうか?
本当ではありません。
「10万ベクレルが行方不明」「バグフィルターによる放射性セシウム除去率50~60%」との御指摘は、様々な仮定を置いて計算された結果ですが、その仮定には適切ではないものが含まれています。例えば、煙突出口の排ガス測定結果が検出限界以下であったものを、検出限界ぎりぎりまで排出されているという仮定を置いています。
島田市の調査結果からバグフィルターによる正確な除去率を求めることはできませんが、煙突から排出される排ガスの放射性セシウム濃度は検出限界未満※1となっています。安全性の目安となる値(排ガス:セシウム134は20ベクレル/m3、セシウム137は30ベクレル/m3、焼却灰は8,000ベクレル/kg)を大きく下回っており、安全性の面で全く問題ありません。また、排ガスのばいじん濃度も定量下限(0.004~0.005g/m3N)未満であり、バグフィルターのばいじん除去性能が正常に働いていることが確認されています。
バグフィルターによる除去率を正確に求めるためには、バグフィルターの前後で排ガス中の濃度を、検出下限値を大幅に下げて測定する必要があります。環境省が行った別の調査結果によれば、除去率が99.9%以上と計算されています※2。
詳しくは、「島田市の試験焼却データに関する見解について」をお読み下さい。
島田市の調査結果からバグフィルターによる正確な除去率を求めることはできませんが、煙突から排出される排ガスの放射性セシウム濃度は検出限界未満※1となっています。安全性の目安となる値(排ガス:セシウム134は20ベクレル/m3、セシウム137は30ベクレル/m3、焼却灰は8,000ベクレル/kg)を大きく下回っており、安全性の面で全く問題ありません。また、排ガスのばいじん濃度も定量下限(0.004~0.005g/m3N)未満であり、バグフィルターのばいじん除去性能が正常に働いていることが確認されています。
バグフィルターによる除去率を正確に求めるためには、バグフィルターの前後で排ガス中の濃度を、検出下限値を大幅に下げて測定する必要があります。環境省が行った別の調査結果によれば、除去率が99.9%以上と計算されています※2。
詳しくは、「島田市の試験焼却データに関する見解について」をお読み下さい。
※1
1号炉:Cs134(ろ紙部0.46Bq/m3、ドレン部0.98Bq/m3)
1号炉:Cs137(ろ紙部0.41Bq/m3、ドレン部1.1Bq/m3)
2号炉:Cs134(ろ紙部0.38Bq/m3、ドレン部1.3Bq/m3)
2号炉:Cs137(ろ紙部0.33Bq/m3、ドレン部1.4Bq/m3)
1号炉:Cs134(ろ紙部0.46Bq/m3、ドレン部0.98Bq/m3)
1号炉:Cs137(ろ紙部0.41Bq/m3、ドレン部1.1Bq/m3)
2号炉:Cs134(ろ紙部0.38Bq/m3、ドレン部1.3Bq/m3)
2号炉:Cs137(ろ紙部0.33Bq/m3、ドレン部1.4Bq/m3)
受け入れ先の自治体で試験焼却をしているところがあるそうですが、試験焼却では何をチェックするのですか?
試験焼却では、排ガス中の放射性セシウム濃度が安全な水準であること、焼却灰の放射能濃度が問題なく埋め立てられるレベルであることなどをチェックします。
人の健康に影響を及ぼすことのない程度であることを実際の処理に準じて確認するために、被災地のがれきを受け入れる自治体において試験的に焼却し、排ガスや焼却灰などに含まれている放射性セシウム濃度などを測定しています。試験焼却の詳細な方法と測定項目は、各自治体が決めています。