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[転載]風害が高層マンションによって起きたと証明するにはどうしたらいいのですか。

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風害が高層マンションによって起きたと証明するにはどうしたらいいのですか。

2004年08月14日

【質問】

 私たちのマンションのすぐ近くに20階建てのマンションが建設されることが「お知らせ看板」で分かり、近所の人たちも大騒ぎとなりました。日照被害もありますが、私たちのマンションは風害の被害がすごいということを問題にしています。それはどうすれば分かるのでしょうか。

 

【答え】

 まだお知らせ看板が出た時点ですから、すぐに建築主の方から近隣の人たちに説明会が開かれると思います。その説明会で日照について日影図などを示して説明があると思いますが、その時、風害について詳しく説明を要求することが大切です。

 

 

【質問】

 風害が高層マンションによって起きたと証明するにはどうしたらいいのですか。

 

【答え】

 風害については民法709条による不法行為に該当するかどうか、つまり受忍限度を超えるかが争われるものですが、不法行為の要件として、加害者側の故意・過失の証明が被害側から立証しなければならない法律構成となっています。したがって、起こった風害つまり被害が、高層マンションによってもたらされたものであることを建築主側に証明させるという協定書を、建築主から勝ちとることも大事なことでしょう。

 

 立証を建築主側が行う協定書を作成しておいた住民側が、大阪地方裁判所、大阪高等裁判所で損害賠償請求を起こしたところ勝訴した事件があります。この事件は、20階建ての高層マンションの建設によって起された強風のため

(1)住環境を侵害された精神的苦痛に対する慰謝料の請求

(2)風害による所有土地・建物の価格低下による損害賠償

――を求めたものでした。

 

 

 大阪地方裁判所、同高等裁判所は(1)の慰謝料は各戸につき60万円を認めたものの(2)については認めませんでした。

 

 

【質問】

 裁判では、風害についての被害はあまり認められないのでしょうか。マンションの中の人たちは「裁判だ、裁判だ」と言っていますが。

 

【答え】

 今まで風害については、実際には歩きづらいような強風が生じることが予想されても、建設禁止を求めた裁判や損害賠償を求めた裁判はなかなか勝訴できませんでした。

 大阪の地方裁判所の判決文でも、「すべて権利の行使は、その態様ないし結果において、社会観念上妥当と認められる範囲内でのみこれを為すことを要するのであって、権利者の行為が社会的妥当性を欠き、これによって生じた損害が、社会生活上一般的に被害者において受忍するを相当とする限度を超えたと認められる時は、その権利の行使は社会観念上妥当な範囲を逸脱したものというべく、いわゆる権利の濫用(らんよう)にわたるものであって、違法性を帯び、不法行為責任を生ぜしめるものといわなければならない」とまず判断しました。

 

 そして風力の被害については、次のように各学説を基準としました。

 「(1)原告ら宅付近の風環境は、本件マンション建築前、村上基準によればランク2、風工学研究所基準によれば領域Bであったところ、本件マンション建築後、村上基準によればランク3を超えてランク4に、風工学研究所基準によれば領域Dに近接した領域C(ただし、これは累積頻度95パーセントの風速であって、累積頻度55パーセントの風速は領域Bである)になり、原告らが感じた風による被害を考慮すると、人が生活する上で障害のある風環境に変化したと推測されること」

 

 しかし、(2)の不動産評価については「原告ら宅付近の風環境が悪化したことが認められるが、原告ら宅の不動産が無価値になったことを示す証拠は存在しない。この点、原告らは、風環境が悪化したことにより、居住できなくなったほか、売却することもできなくなった旨主張し、それに沿う供述も存する。しかしながら、土地については、駐車場としての使用、強固な建物による利用等、風環境が悪化したとしても、使用価値は十分に存在しているのであって無価値であると認めることはできない」と判断して棄却しました。

 

 

【質問】

 建設の差し止めはできませんか。

 
【答え】
 高層マンションが多くなってあちこちで裁判が起きています。建築予定建物の一部取り壊しを請求している事件も福岡市で1件起きています。また、防風壁の設置を求める裁判も愛知県で起きています。地方裁判所へ建築差し止めの仮処分申請等の方法がありますが、建設に着工する前のなるべく早い時点で建設禁止の仮処分の申請はするべきでしょう。建設が進むと裁判所は差し止めを求めることに、ちゅうちょしがちになると思われます。

 
 
 
 
風害裁判
 大阪堺市で20階建てマンション近隣住民が「ビル風により洗濯物を干せなくなったり、屋根瓦が飛ぶなどの被害を受けた。こうした風害により所有の不動産価値の下落を来たし、また、精神的苦痛を受けた。」として、このマンションの事業主、設計者、施工者に対して損害賠償の請求をしました。

 2001年大阪地裁の一審判決では、
「風環境の悪化が近隣住民の受忍限度を超えている」
として事業者側に対して、原告に慰謝料の支払を命じました。つまり、風害により、人格的利益を侵害されたと解釈したのです。
 
 又、控訴審判決では2003年大阪高裁は、近隣住民らの土地建物の価値下落部分も認めました。
 それまでの経過を辿ると、近隣住民は風害を予め懸念して、事業者に対して風洞実験を求めていました。又、事業者は防風林を設ける事そして、もし風害が生じた場合にはその因果関係の立証責任を負担し、損害に対しては賠償をする事を近隣住民約束していたのです。しかし事業者は結局それらの約束を果たさなかったのでした。
 この控訴審判決では風害により、土地価格の下落に対しての財産的損害をも認めたのです。

 
   
風害訴訟
 1912年に竣工した重要文化財指定、木造3階建ての和風建築の銅御殿(旧磯野家住宅)の隣地で進むマンション建設を巡り、周辺住民9人が10年5月、東京地方裁判所に行政訴訟を起こしました。
 マンションが建つと国の重要文化財がビル風で破損する恐れがあるとの理由。現在所 有している 財団法人大谷美術館と周辺住民の要望で、野村不動産と鹿島がマンションによるビル風に関する風洞実験を行い、07年2月までに報告書を まとめました。これについて風工学の専門家が分析のうえ、意見書を作成。
 
 意見書では、破損などの影響が懸念され る土庇部分については、下から吹き上げる風の影響が、現状より最大75%強くなることを示しました。
 原告は、ビル風による損傷の恐れが著しく高いと主張、建主の野村不動産に対して09年4月と9月、区建築審査会に計画変更確認処分の取り消しを求めて審査請求を行いましたが、09年11月、どち らも棄却する裁決の結果に。
 
 文化庁に対する原告の請求には2点の趣旨があります。風の影響に関連して、原告が目を付けたのが文化財保護法の43条、重要文化財の保存に影響を及ぼす行為は文化庁長官の許可が必要と規定。
 建設停止に関しては同法45条で、文化庁長官が文化財の保存のために一定の行為を制限・禁止できると定めています。原告は文化庁に対し、現状以上の風力をもたらすマンションを建設してはならないと開発者に命令することを求めました。
(ケンプラッツ)
 
 
 
 
 

「風害訴訟で勝つ」

 
 大阪高等裁判所は、平成一五年一〇月二八日、風害で被害を蒙った住民が、分譲マンション(三棟で高さ五七メートル)を建てた商社や工務店(いずれも大企業)らを訴えていた損害賠償請求事件で、加害企業三社に対し、慰藉料六〇〇万円(一人一〇〇万円宛)、不動産価値の下落分の損害として一一一〇万円(二戸分)など総額一四九〇万余円(第一審の認容額四二〇万円は既に別途支払われている)の支払いを命じる判決を下した。この判決は確定した。
 
 この判決は、ビル風による風環境の悪化による損害を請求した事件についての、日本で最初の住民側勝訴の判決である(第一審判決を掲載し解説した判例タイムス一一一三号、一七八頁以下参照)。
 
 
 この判決は、次の点で意義があると思う。
 その一つは、判決が右に述べたように風害訴訟で住民側の初の勝訴となったことのほか、風害によって不動産の価値が下落したことについて、「住宅周囲における風環境の悪化が継続する場合、建物のみならず、その敷地の価格が下落するのが自然というべきである」として、風環境の悪化がなかった場合の不動産の価格と、被害者らが売却したときの不動産の価格の差額の七割(風環境等の変化以外の価格下落要因が三割)を、風害による損害として認定したことである。
 これまでは、同種の事件である日照権訴訟や眺望権訴訟において、慰藉料は認めるが請求しても不動産価格の下落を損害として認めない判決がほとんどであったと思われるが、この種の事例でこの点を突破しえたことは極めて意義があるものと思う。今後、この判決は十分に参考にできると思う。
 
 二つには、判決は「個人がその居住する居宅の内外において良好な風環境の利益を享受することは、安全かつ平穏な日常生活を送るために不可欠なものであり、法的に保護される人格的利益として、十分に尊重されなければならない」として、本件について受忍限度を越える被害であると判断したが、この理由は、かかる加害マンションの建築禁止の仮処分などにも十分に活用できると思われることである(もっとも受忍限度論は従前からあったものであるが)。
 
 三つには、この判決は都市部における住民の住環境を無視するような高層マンション建設などの開発に対し、企業(デベロッパー)に警鐘を鳴らすものとなったことである。
 
 
 勝った理由は住民側が業者とのねばり強い交渉のなかで、業者側に加害マンションの建築前、建築中、そして、建設後の五年間にわたって風速計設置による風力や風向を計測させ、そのデーターを提供させ確保したことである。これによって、加害マンション建築による風環境の変化(悪化)や、その程度を立証することができたのである。
 この生データがなければ、高額(七〇〇万円ぐらいときいている)だといわれる風洞実験などによる風害と被害との因果関係を立証しなければならないことになる。この困難を乗り越えるためにも、住民運動による資料の確保をするとともに裁判を経ることなく解決が図られることを願うものである。
 
 

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