商文化なき国家 消費「脱中国」こそ国の守り 編集委員・安本寿久
最近、大阪の繁華街が随分とすっきりした。休日は人波で歩くのも難儀する道頓堀通りもミナミの地下街も、拍子抜けするほどすいすい歩ける。張り上げているとしか思えない大声の会話もほとんど聞こえない。
観光・自動車産業悲鳴
なぜだろうと考えて、はたと気づいた。中国人の団体客が消えたのだ。同時に、列に並ばない、平気で割り込むといった無法もなくなった。一市民として、これほどうれしいことはない。
しかし、観光都市でもある商都・大阪としては困ったことらしい。ドラッグストア・コクミンでは、中国人の団体予約客がゼロになり、高級化粧品などの仕入れ量を減らしたという。がんこ寿司では9月に3万人のキャンセルが入り、10月の予約はゼロに近いという。「観光地悲鳴」。新聞各紙では、そんな見出しが躍っている。
輸出産業も打撃を受けている。中国向け自動車輸出は3割、4割減という状態。財界も悲鳴を上げ、経団連の米倉弘昌会長は、尖閣諸島国有化のきっかけを作った石原慎太郎東京都知事の国政進出に、「具合が悪い」と言ったりしている。かつての財界総理は今にも、中国の兵糧攻めに「参った」と言い出しそうな危うさである。
政治に経済カードを使うことは言うに及ばず、文化カードからスポーツカードまで、ありとあらゆる手段で嫌がらせをし、相手国に譲歩を迫るのは中国の習い性である。その一方で、武力をちらつかせるのも、この国の性根のなせる業だから、今さら嘆くのはやめよう。「金や脅しで魂は売らない」。その決意を新たにすることが今、最も日本人らしい行いである。
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中国は「無法国家」と心得るべし 編集委員・河村直哉
醜悪な顔、と見るほかはなかった。尖閣諸島の国有化に際して中国で暴徒と化し、日系企業の施設の襲撃や略奪に走った隣国の男女の顔である。盗っ人たけだけしいなどといっては、たけだけしいという言葉に失礼に当たる。
同時に、デモと暴動を許し、盗っ人の親分よろしく尖閣の領有を開き直って言い募り、軍艦を持ち出した中国政府は、近代国家としての知性も持ち合わせていないことを満天下にさらした。
ただし、中国が計画的に動いていることは、領海に侵入した監視船の動向などを見ているとよくわかる。今回に限った短期的なものではあるまい。1992年に領海法を制定し尖閣の領有を勝手に定めたときから、腹黒い思惑があったと見るべきだろう。
90年代以降、特に江沢民政権時代に激しくなった反日・愛国運動も表裏一体といえる。誤りも含めて、中国の教科書では戦中の日本の残虐さが強調された。かつて1000万人とされていた抗日戦争の犠牲者数は、3500万人に水増しされた。抗日記念館が各地に造られたが、展示された「残虐写真」には信頼性が乏しいものも指摘されている。
1989年には、民主化を求めて天安門広場に集まった若者らを軍隊が武力弾圧し、多数が死傷した天安門事件が起こっている。反日運動は、事件で信用をなくした中国共産党が国民の不満を外に向けるため日本を外敵にした、と指摘する識者もいる。