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[転載]貧しさが戦争に駆り立てる

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本山義彦氏、彼ほど現代日本が抱える構造的な問題を暴き出す人はいないと考えます。彼の語る内容から学ぶものは多い。その一例を紹介します。<a>

貧しさが戦争に駆り立てる


 とんでもない金持ちもいないし、とんでもない貧乏人もいないのが豊かな社会です。貧しい国ほど、少数のとんでもない金持ちが栄耀栄華を誇り、圧倒的多数の人々が貧困に苦しんでいる。
 戦前の日本は、ものすごい豪邸がある一方で、庶民はろくな家に住んでいなかった。圧倒的な人々が貧しかった。特に農村では大地主が栄耀栄華を誇るかげで、小作人たちは極貧の生活にあえぎ、娘たちは遊郭に売られ、次男三男は軍隊に入るしかなかった。
 志願兵の圧倒的多数は東北など貧しい農家の出身でした。彼らは妹たちが遊郭に売られているときに、東京の金融資本が栄養栄華を極めているのを目にして、五・一五事件や二・二六事件に走った。彼らは「打倒、資本主義」でした。中国を占領すれば貧しさから脱却できると、権力側に利用され、侵略戦争に駆り立てられました。
 国民を戦争に駆り立てたのは理屈ではありません。国家のために軍隊に入ったのではなく、飯が食えるから軍隊に入ったのです。理屈や思想教育はその後です。
 戦後、日本を占領したアメリカが行った改革は、第一が農地改革です。農地を解放し、小作人に農地を与えた。第二が教育改革です。金持ちの子どもや少数のエリートしか入れない旧制中学を廃止して、中学までを義務教育とし、教育費を無料にした。第三が労働組合や市民団体の自由化です。日本が再び、アメリカに対抗するような軍国主義となるのを許さない。それがアメリカの占領政策でした。
 現在のアメリカは徴兵制ではなく志願兵です。しかも、米兵のほとんどが中南米の出身者や黒人、つまり貧しい人たちです。彼らが軍隊に志願するのは大学に入るための奨学金、推薦を受けるためであり、アメリカの市民権を得るためです。貧しさから脱出するためです。イラクで戦争に参加する恐怖や人間としての悲しみに耐え、生きながらえてアメリカに帰って後の生活の保障を選択したのです。貧しさが若者たちを戦争に駆り立てているのです。
 アメリカには、戦前の日本と同じような戦争の構造があります。ごく少数のとんでもないエリートと圧倒的多数の非エリートが存在している社会、これが今のアメリカです。億万長者のビル・ゲイツは彼一人で、アメリカの全労働者の収入の半分を持っています。アメリカの労働者の圧倒的多数は、この二十年間、給料がまったく上がっていません。それどころか、日本のような健康保険制度がないので、医療保険に入ることができない人たちが一七%、四千万人もいます。「ジョンQ」という映画がありました。主人公はリストラで医療保険が高額の医療に適用されず、最愛の息子が心臓病の手術を受けることができない。そこで病院を占拠するという映画です。
 アメリカの権力は、アメリカ人を豊かにするのではなくて、少数のエリートだけが世界の富を独り占めするのに奉仕している。そのために軍隊の強化が必要になる。作り出された貧しさが若者を軍隊に駆り立てる。軍隊はこのように構造的に作り出されているのです。
 (続く)

第7回長崎・沖縄連帯集会講演要旨 「ノーと言えない日本から、自立する日本へ」 福井県立大学教授 本山 義彦、 月刊「日本の進路」168号(2006年8月号)より
本山義彦氏ブログ「消された伝統の復権」http://blog.goo.ne.jp/motoyama_2006

転載元: びんぼう人のぼやき


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