暴動予備軍と習政権の行方
習近平政権が発足して数週間、この政権の不吉な未来を予兆するような暗いニュースばかりが中国から伝わってきている。
たとえば11月27日、中国株の指標となる上海総合指数は久しぶりに2000ポイント台から落ちて約4年ぶりの低水準を記録した。
新しい政権が誕生した直後に株の「ご祝儀相場」が見られることがあるが、中国の場合、むしろ新政権への「失望相場」となっている。
同じ日に中国証券報が伝えたところによると、米JPモルガン・チェースが発表した11月の中国市場信頼感指数(JSI)は49・2で、10月の61・2から大幅に低下した。誕生早々の習政権はすでにバブル崩壊中の経済低迷に悩まされている。
新政権を取り巻く社会情勢はさらに深刻だ。政権発足後わずか10日間で、大規模な暴動事件の発生が3件もあった。
まず11月17日、習総書記自身がトップを務めた福建省寧徳市で、地元警察の汚職を疑う市民ら約1万人が暴動を起こし警察を襲った。
20日には、浙江省温州市郊外の農村で、変電所建設に反対する地元住民1000人以上が警官隊300人と衝突し、200人が負傷した。
その翌日の21日には、四川省広安市隣水県で、地元公安当局に抗議する住民1万人余りの暴動が起きた。公安当局の車が数台破壊され、20人の市民が負傷した。
政権発足直後の暴動多発は、本欄指摘の通り新指導部人事に対する人々の絶望の表れでもあろうが、暴動に至るまでの経緯やその原因をみれば、背後にあるのはやはり、今の体制と社会全体に対する国民の強い反発と不満であると思う。
例えば広安市隣水県で起きた暴動の場合、オートバイを運転していた住民が警察に殴られたことが事件の発端である。寧徳市の暴動の場合、1件の交通事故の発生が地元警察の汚職疑惑をもたらした。
習近平政権は今後、一体どうやってそういう人々を手なずけて民衆の爆発を防ごうとするのだろうか。
おそらく彼らに残される最後の有効手段は、対外的な強硬政策を推し進めることによって国民の目を外に向かわせることであろう。
実際、習政権はその発足後数週間、海軍の「虎の子」の新空母で初の着艦試験を成功させたり、東シナ海と南シナ海でそれぞれ軍事演習を実行したり、フィリピンなどと領有権を争う南シナ海周辺を自国領と紹介する軍監修の地図を発売したりして、まさに軍中心の挑発的な行動を頻繁に展開し始めている。
内政面で追い詰められているこの政権は樹立早々、すでに危険な方向へと走っているようである。
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警察暴力に抗議で1万人が暴動 中国、20人けがと香港人権団体
2012.11.24 23:17[アジア・オセアニア]
香港の人権団体、中国人権民主化運動ニュースセンターは24日、中国四川省広安市で、バイクの運転手に警察が暴力を振るったことをきっかけに約1万人が暴動を起こし、住民20人が負傷したと伝えた。
同センターによると、暴動は同市隣水で発生。警官による暴力に抗議するため集まった住民と警官隊が衝突した。暴動で警察車両2台が破壊されたという。
同センターは、暴動は21日に起きたと報道。一方、別の民主派サイトなどは、騒動が起きたのは20日としており、詳細は不明。
習総書記赴任地で当局への不満から暴動
2012.11.18 20:54[中国]
中国紙、福建日報のニュースサイトは18日、福建省寧徳市で17日夜、5人が負傷した交通事故をきっかけに、公安当局の対応に不満を抱いた住民らが警察車両3両をひっくり返す破壊行為を行ったと報じた。
中国版ツイッター「微博」には公安当局の交通行政をめぐる腐敗問題や、1万人規模の住民が警官隊と衝突し数十人が負傷したなどと情報が書き込まれたが、次々と削除された。
総書記に就任したばかりの習近平氏は1988~90年に市に昇格する前の寧徳地区(当時)で共産党委員会書記を務めた経緯がある。習氏は15日の総書記就任直後の記者会見で党幹部の腐敗問題を「厳しい挑戦」と指摘していた
運転手の突然死で暴動 中国四川省、警察に抗議
2012.10.18 19:53[中国]
中国四川省瀘州市で17日、トラックの男性運転手の突然死をめぐり、警察に抗議する市民らが警察車両を破壊し、暴動になった。中国メディアが18日伝えた。
地元当局者は現場に集まった市民の数は最大で千人余りとしているが、一部メディアは約1万人が集まったとの目撃者の証言を伝えている。
地元当局によると、警官が違法駐車をしていた男性に対し、車両を移動するように指示。男性が従わず、警官との間でもみ合いになった。その際、男性が急に体の不調を訴えたため、救急車が駆け付けたが、死亡したという。
市民らは運転手が死んだのは警官による暴行が原因だと主張。警察車両7台をひっくり返し、火を付けるなどしたという。(