チベット暴動 潜在的不満、一気に 世界注視 胡政権に衝撃
3月15日8時1分配信 産経新聞
【北京=野口東秀】中国チベット自治区での僧侶らによる暴動は、「和諧(調和のとれた)社会」を提唱してきた胡錦濤指導部に大きな衝撃を与えた。北京では全国人民代表大会(全人代)が開催中で、チベット自治区の代表者らが「チベットは目覚ましく発展し安定している」と強調した矢先だった。今回の僧侶らの抗議活動の背景には、「自治」が足踏み状態の中で「中国化」が進む一方という状況に対するチベット人の焦りと不満が横たわっており、五輪開催に向け、チベット問題を国際社会にアピールするねらいがあるとみられる。
チベットでは1980年以降、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の特使団が中国政府と断続的に交渉、同氏の帰国やチベット情勢などを協議してきた。ダライ・ラマも独立をうたわず、中国政府に「高度な自治」を求めてきた。
しかし、中国政府のダライ・ラマ批判は止まず、チベット自治区のトップ、張慶黎・党委書記らは全人代で、北京五輪に向け「最大の不安定要素はダライ・ラマ集団。一日たりとも分裂活動を中止しない(分裂主義者)」と非難していた。
チベットでは、僧侶に対するダライ・ラマ否定の思想教育だけでなく、学校教育や治安面などでも「中国化」を実施してきた。一方で、資金力を背景に老朽化した仏教関連施設の大規模補修事業を実施するなど、チベット民族の心を懐柔し、独立運動を押さえ込もうとする“硬軟両様”の政策を講じてきた。
だが、ラサでは潜在的に反政府感情は強く、きっかけさえあれば民衆の不満が一気に吹き出す状態だった。チベットでは昨年も数十人、数百人レベルの民衆と当局が衝突した末、当局は武装警察を動員し、摘発を繰り返したといわれる。全人代の2日目、胡錦濤国家主席がチベット自治区の分科会に出席、「チベットの安全は全国の安全にかかわる」と強調したのも危機感の表れといえる。
胡主席は、チベット自治区党委書記時代の89年、ラサ暴動を鎮圧し、その功績が故トウ小平氏に評価され昇進につながった経緯がある。今後、抗議行動に対して当局が強硬手段をとれば、国際社会から人権批判や五輪ボイコットの声はさらに強まりそうだ。
最終更新:3月15日10時4分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080315-00000083-san-int
チベット大暴動 米政府、強い懸念
3月15日8時1分配信 産経新聞
【ワシントン=山本秀也】チベット自治区ラサで起きた僧侶らの抗議行動について、米国務省のマコーマック報道官は14日、北京駐在のラント大使が中国政府高官と接触し「群衆弾圧の停止」を求めるなど、米政府の強い懸念を伝えたことを明らかにした。また、国家安全保障会議(NSC)のジョンドロー報道官も、中国の治安当局とチベット群衆の衝突を「遺憾」としたうえで、「中国政府はダライ・ラマ14世と対話すべきだ」とするブッシュ大統領の見解を示した。
最終更新:3月15日9時6分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080315-00000070-san-int