野田内閣総理大臣 平成24年 年頭所感
東日本大震災と原発事故。電力需給の逼迫。集中豪雨。そして、歴史的な円高と欧州債務危機。国難ともいうべき試練に相次いで見舞われた激動の一年を経て、新しい年が始まります。
今日から始まる一年は、日本再生に歩み始める最初の年です。「希望と誇りある国・日本」を目指して、確かな一歩を踏み出したと実感できる年にしなければなりません。
昨年九月に発足した野田内閣は、「今、目の前にある課題」を一つ一つ解決するべく、これまで、精一杯、取り組んでまいりました。
先の臨時国会では、十二兆円を超える三次補正予算と関連法が成立し、震災からの復興を力強く推し進める「仕組み」が整いました。昨年末には、東電福島第一原発の原子炉の「冷温停止状態」を達成しました。新たに設置する復興庁を司令塔として、震災復興と福島再生は、これから大きくスピードアップさせてまいります。
震災前からの「宿題」である、経済成長と財政再建の両立という難しい課題にも、本腰を入れて取り組まなければなりません。世界最速の少子高齢化が本番を迎えます。高齢者を支える側であるべき若者世代のセーフティネットを強化しつつ、社会保障制度の持続可能性を高めなければなりません。
財政規律を維持し、「国家の信用」を守ることは、今を生きる私たちが未来の世代から託された責任です。同時に、長きにわたる停滞を乗り越え、将来に繁栄を引き継ぐ「経済再生」も、待ったなしです。「社会保障と税の一体改革」をしっかりと具体化させていくとともに、平成24年度予算と第4次補正予算を早期に成立させ、日本再生の確かな証を刻んでまいります。
もちろん、不断の歳出削減と税外収入の確保に全力で取り組みます。併せて、公務員の給与削減や郵政改革の早期実現を期するとともに、議員定数の削減の問題に「力こぶ」を入れて取り組んでいきます。
主要国の指導者の多くが交代する可能性のある本年、我が国を取り巻く国際情勢は予断を許しません。国民の安全を守り、安全保障を確かなものとすることは、国家の果たすべき役割の「基本中の基本」であり、最も重い責務です。北朝鮮情勢を注視し、種々の危機管理に万全を期すという務めは、決して揺るがせには致しません。
こうした「今、目の前にある課題」を乗り越えたその先に、私が目指す「国づくり」の姿が見えてきます。近代国家に生まれ変わる幕末・明治の時代にも、そして、戦後の焼野原から立ち上がり、高度成長を遂げていた「三丁目の夕日」の時代にも、「今日より明日が良くなる」という希望が国全体に溢れていました。昨今、こうしたささやかな希望さえ感じにくくなったという声が少なくありません。
目の前の数々の危機は、日本を覆う閉塞感を拭い、新たな発展をもたらすチャンスにもなりえます。私は、大震災からの復興を契機として、「希望と誇りある日本」を取り戻したいと思っています。
中長期的な経済成長と「分厚い中間層」の復活を実現し、「今日よりも明日が、より豊かで幸せになる」という確かな《希望》を生み出す。そして、「この国に生まれてよかった」という《誇り》を将来の世代に残していく。これが、私の目指す「国づくり」の基本です。
もちろん、右肩上がりに経済が拡大する高度成長期と、経済社会が成熟し、少子高齢化に直面する現在とでは、時代環境が全く異なります。過去のような高い成長を実現することも、容易ではありません。しかし、だからこそ、「挑戦」を続けなければ、「豊かさ」を維持していくことはできないのです。
アジア太平洋が世界の成長センターとなる時代において、グローバル化の利点を最大限に活かしていくことが欠かせません。我が国は、「アジア太平洋自由貿易圏」(FTAAP)構想の実現のため、各国の先頭に立って様々な方策を追求してまいります。
日本に広がる幾多のフロンティアは、私たちの挑戦を待っています。社会の中で持てる力を十分に発揮できていない「女性」。二十一世紀の大成長産業となる可能性を秘めた「農業」「再生可能エネルギー」「医療」。海洋資源の宝庫である「海洋」。無限の空間的な広がりを持つ「宇宙」。産官学の英知を結集し、内外のこれらのフロンティアを「夢」から「現実」に変え、日本再生の原動力とします。
「何かに挑戦することによるリスク」を恐れるより、「何もしないことのリスク」を恐れなければなりません。山積する課題に正面から取り組み、一つ一つ、成果を上げていく。これは、国難のただ中を生きる日本人が果たすべき歴史的使命でもあります。
この「日本再生」という使命を、国民の皆様と共に考え、挑み、そして、実現していきたい。そうした「願い」と「決意」を新たにしつつ、皆様のご健勝とご多幸をお祈りして、新年のご挨拶とさせていただきます。
平成二十四年一月一日
内閣総理大臣 野田佳彦
内閣総理大臣 野田佳彦
希望と誇りある日本を取り戻すため思いきった政策を展開していく
野田 佳彦(民主党代表)
昨年は、3月11日の東日本大震災、そしてそれ以降も台風や集中豪雨など、多くの自然災害が発生しました。
あらためて「国民の生命・財産を守る」という、この国の一番重要な責務を何度も思い起こし、心に刻んだ年でした。災害で亡くなられた皆さまのご冥福をあらためてお祈り申し上げます。
昨年の9月に発足した野田政権の最大かつ最優先の課題は、東日本大震災からの復旧・復興と、原発事故の収束、そして日本経済の立て直しです。第1次、第2次補正予算によって、復旧には万全を期しました。
そして昨年、臨時国会で成立した第3次補正予算によって、本格的な復興に向けた事業を加速することができるようになりました。原発事故の収束については、昨年の12月16日、ステップ2である冷温停止状態を確認することができました。着実に成果をあげていると思います。
そして、日本経済の立て直しのためにも、間断なく経済対策を講じてきたつもりです。本年は、これらの大きな課題を一層スピードアップしていく、そういう役割を私たちは果たしていかなければならないと思っております。「この国に生まれてよかった」と思える「希望と誇りある日本」を取り戻すため、しっかりと優先順位をつけて、思い切った政策を展開していく決意です。
まずは通常国会冒頭で、平成24年度予算、この中には引き続き、震災からの復興、原発事故からの復活に向けた措置がたくさん盛り込まれています。その早期成立を図っていきたいと思います。そして、成長戦略を着実に実施し、分厚い中間層を復活させる、そういう目的を達成させるための、日本再生の元年に位置づけていきたいと思っています。
なお、留意しなければいけないのは、経済の成長と財政健全化を両立を図るということです。そのためにも特に、国民の安心の基礎である年金・医療・介護、そして子育て支援を充実させ、社会保障制度を持続可能なものにしていくために、「社会保障と税の一体改革」を次の世代に先送りをせず、私の政権の下で行っていく覚悟です。
もちろん徹底して行政改革を強力に推進することは大前提です。復興財源をねん出するためにも、「公務員給与削減法案」あるいは「郵政改革法案」の通常国会における早期成立を図ります。
また、特別会計の改革、独立行政法人・公益法人の改革など、あらゆる方策を尽くして行革に取り組む決意であります。また特に、まずは隗(かい)より始めよ、国会議員の定数削減については、一歩も譲らぬ覚悟で臨み、通常国会での早期成立を図る決意です。
震災の際に世界の多くの国々から賞賛されたように、私たち日本人は、温かい思いやり、そして助け合いの精神を持っています。私は、こうした国民の持つ長所を大切にし、それを生かし、伸ばしていく社会をつくっていきたいと思います。一人ひとりが自らの良いところを伸ばし、持てる力を発揮し、お互いに思いやりを持って支え合う社会をめざして、政府・民主党一丸となって取り組んでまいります。ともに力を合わせ、心を合わせ、希望の年となりますように進んでいきましょう。