日本におけるTPPに対する反応
国会
- 日本がTPPの参加交渉に参加するか否かを巡って、現在、様々な論戦が繰り広げられている。政府と民主党の執行部はTPP参加交渉に積極的な立場であるが、反対・慎重派の議員も多い。
- 2011年10月25日に全国農業協同組合中央会(JA全中)が「環太平洋連携協定 (TPP) 交渉参加に反対する請願」を衆参両院議長に提出した際には、紹介議員として衆・参合わせて356人の議員が名を連ねた。反対派議員の政治的スタンスは保守から革新へと幅広い。野党のみならず与党からも124名がこの紹介議員として名を連ねた。
- 2011年11月11日衆・参両院は午前と午後に順次予算委員会で経済連携等やTPP等を議題とした集中審議をが行い、みんなの党は賛成の立場で質疑し、その他の党・会派はTPPへの参加表明への慎重な判断を促す、表明反対・時期尚早などの立場から質疑が行われた。同日午後8時に野田首相は記者会見で『明日から参加するホノルルAPEC首脳会合において、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることといたしました』と表明した。
推進派の政党
- みんなの党
- みんなの党は、政党としては唯一、日本のTPP参加を推進する立場である。
- みんなの党の農業アジェンダでは、TPP参加表明後に、関税撤廃までの間に「平成の農業改革」を行いGDP30兆円産業を目指すとしている。
- TPP推進の理由として江田憲司幹事長は、「資源に乏しく、人材と技術を駆使し「貿易立国」で「国を開いて」生きていくしかない日本にとって、TPP(環太平洋経済連携協定)への早急な参加は必要不可欠である」と主張している。農業政策については「我が国農業の足腰を強くし、農業を将来にわたって、成長・輸出産業に育てあげていくことだ」とする。
- 例外として党所属の川田龍平は、TPP参加で日本の国民皆保険制度が崩れかねないとして、慎重的である。
反対・慎重派の政党
公明党
- 公明党は、日本のTPP参加に反対している。東京の日比谷公会堂で2011年10月26日に行われた「TPP交渉参加に反対し日本の食と暮らし・いのちを守る全国決起集会」に井上義久幹事長が登壇し党幹部として反対を初めて正式に表明した。
- 全国農業協同組合中央会(JA全中)が衆参両院議長に提出した「環太平洋連携協定 (TPP) 交渉参加に反対する請願」には公明党所属の25名が賛同議員として名を連ねている。この中には、党の要役である井上幹事長も含まれている。
- 日本共産党
- 日本共産党は、日本のTPP参加に反対している。理由として、農林水産業に壊滅的な被害をもたらすこと、震災復興に悪影響となること、食品安全、医療、雇用、国民生活のあらゆる分野に被害を及ぼすことを挙げている。
- 2011年10月25日、全国農業協同組合中央会(JA全中)が「環太平洋連携協定 (TPP) 交渉参加に反対する請願」を衆参両院議長に提出した。この請願の紹介議員として志位和夫党委員長を含めた全議員が名を連ねている。
- 社民党
- 社民党は、日本のTPP参加に反対している。2011年10月24日に福島瑞穂党首が政府に「環太平洋経済連携 (TPP) 協定交渉への参加表明に反対する申し入れ」を行った[153]。
- 2011年10月25日、全国農業協同組合中央会(JA全中)が「環太平洋連携協定 (TPP) 交渉参加に反対する請願」を衆参両院議長に提出した。この請願の紹介議員として福島瑞穂党首を含めた全議員が名を連ねている。
- 民主党の議員らが中心となり設立した議員連盟の「TPPを慎重に考える会」に福島党首らも参加している。
- 国民新党
- 国民新党は、2011年現在与党という立場であるが、政府が推進する日本のTPP参加には反対している。また、TPPを議論する政府の関係閣僚会合に国民新党の党籍を持つ自見庄三郎金融相を参加させることを要求している。
- 民主党の議員らが中心となり設立した「TPPを慎重に考える会」に亀井代表らも参加している。
- 2011年10月25日、全国農業協同組合中央会(JA全中)が「環太平洋連携協定 (TPP) 交渉参加に反対する請願」を衆参両院議長に提出した。この請願の紹介議員として亀井静香代表ら4名の議員が名を連ねている。
- たちあがれ日本
- たちあがれ日本は、TPPの参加交渉に加わったうえで、判断すべきという主張である。ただし平沼赳夫代表は、日本のTPP参加について「政治家個人として、私は反対だ」と明言している。
- 2011年10月25日、全国農業協同組合中央会(JA全中)が「環太平洋連携協定 (TPP) 交渉参加に反対する請願」を衆参両院議長に提出した。この請願の紹介議員として平沼赳夫代表ら4名が名を連ねている。
- 新党日本
- 新党日本は、日本のTPP参加に反対している。現状(2011年現在)2.5%でしかない自動車に対する米国の輸入関税率を例に挙げて、TPPは貿易自由化協定でなく「貿易阻害協定」であるとも表明している。
- 2011年10月25日、全国農業協同組合中央会(JA全中)が「環太平洋連携協定 (TPP) 交渉参加に反対する請願」を衆参両院議長に提出した。この請願の紹介議員の一人として田中康夫代表が名を連ねている。同代表は、TPP参加は、日本市場から日本の最大貿易相手国である中国の排除に繋がり、万一同国が対抗手段として対EU・FTAを締結した場合、日本はかえって貿易上世界で不利になる、と警鐘を鳴らしている。
- 民主党の議員らが中心となり設立した「TPPを慎重に考える会」に田中代表も参加している。
立場を明確に表明できない政党
- 民主党
- 民主党は、党から輩出している首相及び閣僚と執行部(主流派)は、日本のTPP加盟を目指している。ただ必ずしも一枚岩とは言えず鹿野道彦農林水産相ら一部はTPPに対して慎重な立場をとっている。
- 党は推進派と反対派に割れているため、TPPに対する党の統一見解は定まっていない。そのため執行部は、党プロジェクトチーム (PT、鉢呂吉雄座長) 総会を開催し早期に意見集約を目指した(2011年11月12日からハワイで行われるアジア太平洋経済協力会議の開催に間に合わせるため)。2011年11月9日に党プロジェクトチームは党内に反対派が多いことを考慮し、政府に対しTPP参加交渉のテーブルに着くことに対し「慎重に判断することを提言する」と表明した。ただし、この提言は野田首相の政治的判断を縛るものではなく、事実上首相に判断を委ねた形であるとされる。
- 自由民主党
- 自民党は、交渉参加の賛否については明確な主張はしていない。2011年11月8日の総務会で、TPP参加について十分に議論して判断すべきとして、APEC首脳会議での野田首相の交渉参加表明に反対するという党方針を決定した が、TPP参加の是非には触れていない。
- 党内には推進派と反対派が混在しているが現時点では反対派の議員数が、推進派の議員数を大きく上回っている。 JA全中によるTPP交渉参加反対の請願においては、衆参の所属議員の82.6%にあたる166人が参加しており、事実上反対派が圧倒的優勢である。。
地方自治体
- 共同通信社が実施した環太平洋連携協定 (TPP) の交渉に関する緊急アンケート(2011年10月下旬実施)では、賛成派の都道府県知事は、条件付き参加も含め全国で6人に留まった。反対派は14人。賛否を保留したのは27人である。保留した知事からは、政府の説明不足を非難する声が目立った。また東京都知事の石原慎太郎も10月28日の記者会見で反対を表明した。
地方首長の協議会
- 東北市長会は、2010年10月18日に国会に日本がTPPへ参加することに対して慎重な対応を求める要望書を提出している。
- 「四国4県町村長・議長大会」 は、2011年10月13日に開催した会合で、政府に対して環太平洋連携協定 (TPP) への不参加を要望する特別決議を行った。
- 九州市長会は、2011年10月20日の総会で、政府に対し環太平洋連携協定 (TPP) 交渉参加について慎重に審議するよう求めた。
- 全国町村会は、2011年10月28日の会合で日本のTPP参加反対を決議した。主な理由として「農林漁業との両立困難」をあげている。
地方議会
- 2011年1月21日の時点で、政府のTPP参加交渉に対して「参加に反対」か「慎重対応」を求める決議が1115の地方議会で行われたことが農林水産省の調べで明らかになっている。内訳は、都道府県議会が40、市町村議会が1075(うち政令指定都市の議会が8)となる。
- 2011年10月20日、農水省は省に寄せられたTPPに関する意見書が1474件になることを明らかにした。そのうち「参加すべきでない」が72.6%、「慎重に検討すべき」が22.4%で、95%の地方議会が政府に対して、日本のTPP参加交渉に反対か慎重な立場で判断することを求めている。
国民世論
世論調査
- 世論調査では、各調査ごとにばらつきが見られる。一例として日本経済新聞が2011年10月31日付朝刊で報じた世論調査の結果によると、環太平洋経済連携協定 (TPP) に「参加すべきだ」と答えた人は45%で「参加すべきでない」32%を上回る結果となった]が、ニコニコ動画が2011年10月27日に実施したネット世論調査では、回答を得られた8万4012人中、「参加すべき」は20.9%で、44.4%の「日本はTPPに参加すべきではない」を大きく下回る結果となった。
- 産経新聞の調査(回答9125人(男性6527人、女性2598人))によると、「TPP交渉参加は日本に利益をもたらすか」に関してノーが87%に達し、「交渉参加をしても不利になった場合は離脱できると思うか」についても「思わない」が89%を占め、「政府の説明は十分か」についてはノーが94%を占めたと報道されている。
詳細は「TPP反対デモ」を参照