2011年(H23)11月8日に行われた、第一次訴訟(3世帯)・第2回「控訴審」に提出された準備書面を掲載しています。
今回の準備書面内訳
[1]平成23年10月24日付け、附帯被控訴人(両備)より答弁書。
[2]平成23年10月24日付け、控訴人(両備)より第1準備書面。
[3]平成23年10月24日付け、控訴人(両備)より証拠説明書(2)。
[4]平成23年10月31日付け、附帯控訴人(住民)提出、準備書面。
[5]平成23年11月 4日付け、控訴人(両備)より第2準備書面。
[6]平成23年11月 7日付け、附帯控訴人(住民)提出、準備書面。
【第二審】
控訴人・附帯被控訴人・被告 ; (両備ホールディングス株式会社)
附帯控訴人・被控訴人・原告 ; (小鳥が丘団地第一次訴訟3世帯住民)
小鳥が丘土壌汚染・第2回「控訴審」!その6
[2]平成23年10月24日付け、控訴人(両備)より第1準備書面、の続きです。
(第2 本件土地の取得及び分譲の経緯)
7 控訴人による追加土壌改良工事
以上のとおり、山幸建設が工事を行った後、工事代金や売買代金を巡る紛争に発展し、山幸建設が留置権を行使し占有を継続するなどしていたため、控訴人は本件土地の土壌改良工事を保留していたが、紛争が一段落したことで、本格的に追加土壌改良工事に乗り出し、昭和59年2月頃から、土木・建築業を業務としていた株式会社東山工務店(以下「東山工務店」という。)と幾度となく工事内容を協議しつつ(乙第53号証、乙第54号証)、東山工務店の助言や提案を取り入れて造成工事の計画を練った。
その結果、概要、昭和59年9月から11月にかけて、控訴人は、①旭油化が操業する前の標高(旧GL)と同社撤退後の現況標高(現況GL)までをケミコ(石灰系固化材)を使って地盤を固めるとともに、消臭・脱臭を行い、②土壌改良の過程で地中に埋まっていたドラム缶は場外へ搬出し、③追加でユーコーデルセン(防臭剤)を噴霧して消臭・脱臭を行い、④土地を約2年間寝かした後、⑤2年後の昭和62年になって造成を開始することとして、場外の真砂土を約0.5メートル盛土した上で造成を行った。以下工事内容を詳述する。
(1)ケミコによる土壌固化・消臭
ケミコによる土壌固化・消臭工事は、以下に図示したものと同じ図が書かれている東山工務店作成の乙第55号証を見れば分かるが、現況GLと旧GLの間の土壌にケミコ833トンを混ぜて攪拌・消臭した上で、計画標高を11メートルとして、造成時に約0.5メートルは真砂土により盛土する工事であり、ケミコによる地盤改良後の土は、本件土地の北側で低い部分に利用できる部分は利用したが、油が多く混じっていてケミコを使って改良しても他に流用ができない土は産業廃棄物として産業廃棄物処分場に運んでいる(なお、計画標高は工事の途中で変更になっている。)。
これを、例えば、「北側(低い)①」で始まる書面(乙第55号証の1)で説明すると、1034平方メートルの土地につき、(ⅰ)旭油化操業前の旧GLが8.64メートルから現況GLが9.99メートルまでの1.35メートル分をケミコを使って地盤改良し、(ⅱ)現況GL9.99メートルから10.50メートルまでの0.51メートル分を本件土地の南側でケミコを使って地盤改良した土を足土し、(ⅲ)10.50メートルから計画標高11メートルまでの0.5メートル分を盛土する計画であった。
また、「南側(高い)⑤」で始まる書面(乙第55号証の5)で説明すると、1237平方メートルの土地につき、(ⅰ)旭油化操業前の旧GL9.38から現況GL11.63メートルまでの2.25メートル分をケミコを使って地盤改良し、(ⅱ)10.50メートルから現況GL11.63メートルまでの1.13メートル分を除去し(そのうち一部を北側に移動させ、一部を本件土地外に搬出)、(ⅲ)10.50メートルから計画標高11メートルまでの0.50メートル分を盛土する計画であった。
ケミコは軟弱な土質に混合、攪拌、転圧し、その硬化反応と脱水作用を利用して土質の安定処理を行うために使用される石灰系(主成分は生石灰)の土壌固化材であるが(乙第58号証)、控訴人は、東山工務店と相談のうえ消臭効果を期待してこれを使用したものである。
現在においても、生石灰と土壌を混合させて油臭対策が行われており(乙第59号証、乙第60号証、乙第61号証)、これは有効な油臭対策である。
すなわち、生石灰からなる製剤と水を混ぜることで熱が生まれ、その熱を利用しながら撹拌することで油分を空中へ飛散させ浄化でき、浄化された土壌は埋め戻しにも使えるからである(乙第62号証、乙第63号証、乙第64号証)。
控訴人は概ね上記計画に沿って土壌改良工事を行ったが、これは、乙第55号証の1~9の下側に手書きされている数値が東山工務店作成の出来高調書(乙第57号証)の出来高の数値とほぼ一致していることから裏づけられる。
すなわち、乙第56号証の表は、乙第55号証の1~9の下側に手書きされている地盤改良土等の数値を表に纏めたものであるが、出来高調書の出来高と乙第55号証の1~9の手書きの数値を比較検証してみると、両方とも地盤改良土の合計は14483平方メートルとなる。同様に、ケミコの量も乙第55号証の1~9の下側に手書きされた数値の合計833トンは出来高調書と同じである。
なお、控訴人らは工事開始後に、本件土地の東側道路に合わせて、徐々に南側に高くなっていく本件土地の地形をある程度生かして改良工事を行うことに変更したことにより、本件土地の南側で11メートルより標高を高くしている部分があるが、南側土地を11メートルより高くして現況GLに近づけても、当初の計画から既に旧GLと現況GLとの間の土壌をすべて改良することを予定していたため、計画変更の前後で、地盤改良土量とケミコの量を変更する必要はなく、そのため、乙第55号証の1~9の地盤改良土量とケミコの量は出来高調書の出来高と一致しているのであり、基本的な工事内容は計画どおりに行われている。
また、出来高調書の「産業廃棄物」1450トン(乙第57号証)は、油が多く混じっていて利用できない土を産業廃棄物処理場に搬出したものである。
控訴人は、上記土壌改良工事の代金として、昭和59年10月15日に1025万円、同年11月15日に2214万4800円、同年12月15日に433万7200円の合計3673万2000円を東山工務店に支払った(乙第65号証)。
なお、同金額は工事の出来高を記載した出来高調書の累計出来高3443万300円(乙第57号証)と近似していることからも、出来高調書や乙第55号証の1~9の工事が行われたことが推測できる。
(参照)
<YAHOO!ブログ>、2011年11月23日
小鳥が丘土壌汚染・第2回「控訴審」!その6
l 2011年(H23)11月8日、「控訴審」の第2回口頭弁論実施。
マイホーム土壌汚染被害・民事訴訟第一次(3世帯)住民の母体である「小鳥が丘団地救済協議会」が、3世帯被害住民の体験を発信し多くの方と議論してきました。この記事を発生順序で整理し再度掲載します。
次回に続く
(参考文献;『深刻化する土壌汚染』第5章「岡山市小鳥が丘団地の土壌汚染事件(小鳥が丘団地救済協議会住民 著)」)
2004年7月に岡山市水道局工事で発覚した小鳥が丘団地住宅地の土壌汚染公害問題は、発覚後8年近く経過し団地住民と宅地造成販売した両備バス㈱の考えが平行線のままで裁判に発展しています。2007年8月に住民3世帯(第1次訴訟)が岡山地方裁判所に民事提訴したあと、住民18世帯(第2次訴訟)も続いて提訴し係争中です。第1次訴訟(3世帯)の第一審判決は2011年5月31日に行われ、原告(住民)勝訴となり、知るかぎりでは土壌汚染裁判で被害住民が勝訴した「全国初」の判決となりましたが、被告(両備)が即刻控訴しました。原告(住民)も附帯控訴を提起し、引き続き第二審(広島高等裁判所・岡山支部)で争われ、判決言い渡しは2012年6月28日に行われます。
戸建住宅団地の敷地足下から真黒い土壌発覚!