マイホーム土壌汚染被害・民事訴訟第一次(3世帯)住民の母体である「小鳥が丘団地救済協議会」が、3世帯被害住民の体験を発信し多くの方と議論してきました。この記事を発生順序で整理し再度掲載します。
l 2011年(H23)11月8日、「控訴審」の第2回口頭弁論実施。
小鳥が丘土壌汚染・第2回「控訴審」!その5
[2]平成23年10月24日付け、控訴人(両備)より第1準備書面、の続きです。
第2 本件土地の取得及び分譲の経緯
控訴人は、昭和57年に旭油化から本件土地を取得した後、昭和59年に土壌改良工事を行い、昭和62年に造成工事を行って分譲販売を開始している。
これまで控訴人は昭和57年から昭和62年当時の資料が見当らなかったため、具体的に上記事実の詳細を主張することができなかったが、平成23年4月の不動産部門の事務所移転に伴い再度控訴人が自社の倉庫を捜索したところ、当時の資料が見つかったので、資料に基づき、昭和59年や昭和62年において、控訴人が本件土地において行った土壌改良工事及び造成工事の内容を明らかにする。
1 岡山県・岡山市からの土地取得要請
昭和57年より以前から、旭油化は操業過程で工場から悪臭を発生させ、同工場の北隣の「小鳥の森団地」等の住民の生活環境を悪化させていた。
控訴人は岡山県や岡山市から、本件土地を分譲用宅地として控訴人が購入して旭油化を退去させることで悪臭をなくすことができないか相談を持ちかけられたことを契機に、岡山県県庁環境調整課から測量図の送付を受けるなどして本件土地の購入検討を開始し、最終的に次項の即決和解のとおり、本件土地を購入した(甲第1号証の2、乙第46号証)。
これは、行政も、当時、本件土地が宅地に利用することができると考えていたことの現れであり、本件土地を宅地分譲することが当時の知見からして何ら不適当ではないことを示唆している。
2 旭油化との即決和解
控訴人は、付近一帯から悪臭をなくす目的で、昭和57年7月27日、旭油化との間で、本件土地上のすべての建物及び地下工作物を収去し、本件土地上のコンクリート、廃白土及び、アスファルト部分を除去し、本件土地上の油脂付着物を除去する条件付きで即決和解し、本件土地を取得した(甲第3号証)。
3 旭油化による廃白土及び油脂付着物撤去工事
旭油化は即決和解の上記条件の履行を山幸建設株式会社(以下「山幸建設」という。)に依頼した。
同社は、1483万2700円の工事代金で、工事を請け負い、昭和57年8月2日から同年12月20日の4ヵ月以上の期間をかけて、本件土地上に存在する油カス、ドラム缶等の廃棄物処理工事等を行った(以上、乙第51号証、乙第52号証の口頭弁論調書(和解)別紙「請求の原因」(6枚目)御参照)。
なお、旭油化は山幸建設に請負工事代金1483万2700円のうち、185万円しか支払わなかったため、後に山幸建設との間で紛争が発生した。
4 岡山県による現地確認
公害苦情処理事例集によれば、昭和57年8月20日に旭油化の工場で場内汚でいの撤去作業が始まり、同年10月9日、岡山県に場内汚でいの撤去報告書が提出されている。
また、同月下旬に原料ドラム缶の搬出及び建築物、製造設備の解体が始まり、翌年1月10日に岡山県が撤去確認調査を実施し、撤去完了を確認している。
以上の記載は、上記の山幸建設が廃棄物処理工事を行った時期とほぼ一致しており、山幸建設が行った工事のことを指していることが明らかであるが、当該工事について、岡山県は、撤去完了を現地で確認し、工事に対する異議を特段述べていない。
堆積汚泥を含む産業廃棄物の撤去が監督官庁の満足のいく程度に行われたことは、この確認により明らかである。
5 控訴人による撤去工事の確認と代金支払いの留保
控訴人は本件土地の残代金の支払いに際して、上記即決和解第6項の条件が履行されているか現地を確認したところ、本件土地上にまだ臭いが少し残っており、油脂付着物等の除去が必要であると感じられた。
そこで、その旨旭油化に通知した上で(乙第47号証)、本件土地の引受けを拒絶したことで、旭油化との紛争に発展した。
そのうえで、控訴人は自ら自主的に追加工事を行うことを視野に、株式会社ナップ工業に、本件土地の簡易調査を実施させ、和解条項第6項の義務を果たすのに必要な費用(土砂処分代等)合計3135万円を、債務不履行による損害賠償金として、売買残代金から差し引くと旭油化に対して主張したが(乙第52号証の口頭弁論調書(和解)別紙「請求の原因」(5枚目)御参照、乙第48号証)、折り合いがつかず、追加工事費用相当額の3000万円を旭油化の代理人の山根剛弁護士(以下「山根弁護士」という。)に預託し、同額を差し引いた売買代金1億2146万円を控訴人が旭油化に支払うことで暫定的に合意した(乙第49号証)。
6 控訴人による山根弁護士に対する3000万円の返還請求その他の紛争
上記合意の後、控訴人は旭油化との間で話し合いを重ねたが、旭油化が破産したことも一因となり話し合いによる解決ができず、控訴人は山根弁護士から3000万円の預託金の返還も受けられない状態が続いたため、山根弁護士に対する3000万円の返還請求訴訟を提起した(乙第52号証)。
他方で、山幸建設は、旭油化から請負工事代金1298万2700円の支払いを受けていなかったことから、昭和59年2月4日、請負工事代金債権を請求債権として、控訴人の山根弁護士に対する預託金返還請求権を仮差押えし、(乙第50号証)、さらに、同月5日、控訴人に対し、本件土地の占有を継続して留置権を行使した(乙第51号証)。
また、山幸建設は、昭和58年9月、岡山地方裁判所に対し、旭油化代表者を被告として、請負代金残金の支払を求める訴訟を提起した(乙第52号証)。
かくして、最終的に、控訴人、旭油化、山根弁護士、山幸建設の4者が複雑に絡み合う裁判にまで発展したが、昭和58年12月16日、山根弁護士から控訴人に対し1600万円、山幸建設に対し1000万円、旭油化破産管財人に対し350万円、旭油化代表者に対し50万円をそれぞれ支払うこと、山幸建設は、本件土地に有する留置権を放棄することで和解が成立した(乙第52号証)。
(参照)
<YAHOO!ブログ>、2011年11月22日
小鳥が丘土壌汚染・第2回「控訴審」!その5
【第二審】
控訴人・附帯被控訴人・被告 ; (両備ホールディングス株式会社)
附帯控訴人・被控訴人・原告 ; (小鳥が丘団地第一次訴訟3世帯住民)
2011年(H23)11月8日に行われた、第一次訴訟(3世帯)・第2回「控訴審」に提出された準備書面を掲載しています。
今回の準備書面内訳
[1]平成23年10月24日付け、附帯被控訴人(両備)より答弁書。
[2]平成23年10月24日付け、控訴人(両備)より第1準備書面。
[3]平成23年10月24日付け、控訴人(両備)より証拠説明書(2)。
[4]平成23年10月31日付け、附帯控訴人(住民)提出、準備書面。
[5]平成23年11月 4日付け、控訴人(両備)より第2準備書面。
[6]平成23年11月 7日付け、附帯控訴人(住民)提出、準備書面。
次回に続く
(参考文献;『深刻化する土壌汚染』第5章「岡山市小鳥が丘団地の土壌汚染事件(小鳥が丘団地救済協議会住民 著)」)
2004年7月に岡山市水道局工事で発覚した小鳥が丘団地住宅地の土壌汚染公害問題は、発覚後8年近く経過し団地住民と宅地造成販売した両備バス㈱の考えが平行線のままで裁判に発展しています。2007年8月に住民3世帯(第1次訴訟)が岡山地方裁判所に民事提訴したあと、住民18世帯(第2次訴訟)も続いて提訴し係争中です。第1次訴訟(3世帯)の第一審判決は2011年5月31日に行われ、原告(住民)勝訴となり、知るかぎりでは土壌汚染裁判で被害住民が勝訴した「全国初」の判決となりましたが、被告(両備)が即刻控訴しました。原告(住民)も附帯控訴を提起し、引き続き第二審(広島高等裁判所・岡山支部)で争われ、判決言い渡しは2012年6月28日に行われます。
戸建住宅団地の敷地足下から真黒い土壌発覚!