Quantcast
Channel: 持続可能な開発(水・土・廃棄物)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2268

[転載]もし中国の原発が事故を起こしたら…高速鉄道と同じ構図

$
0
0

もし中国の原発が事故を起こしたら…高速鉄道と同じ構図

2013.2.16 12:22(1/4ページ)中国
 
《20××年、中国・河北省唐山市付近を震源とするマグニチュード7.3の直下型地震が発生した。少し遅れて渤海湾を挟んで対岸にある紅沿河原発を津波が襲い、全電源が喪失、原子炉はメルトダウンした。原発から大量に流出した放射性物質は北部九州に飛来し、福岡市の博多駅や福岡空港には避難しようとする住民が殺到し、大パニックに陥った-》
 これはあくまで悪夢のシミュレーションだが、決して絵空事ではない。
 その証拠に遼寧省に建設中の紅沿河原発近くの唐山市では1976年に直下型の大地震が起き、死者24万人を出している。前年の75年には、北東約400キロ離れた海城市を直下型地震が襲い、1千人超の死者を出している。ちなみに海城地震は「ネズミの大群が逃げ出した」などの住民情報を元に政府が避難を呼びかけて被害を最小限に抑えられたと伝えられ、世界で唯一「予知された地震」として知られる。
 実は渤海湾周辺には中国で最も地震を引き起こしやすいとされる2つの地震帯があり、過去にもしばしば大地震に見舞われている。その地震帯の真上に建設中なのが紅沿河原発だ。2007年に1号機の建設が始まり、現在4号機まで着工済み。他にも原発の「建設ラッシュ」が続く中国沿岸部では、地震帯に沿って、いくつもの原発が次々に計画されている。
 もし中国で重大な原発事故が起きたらどうなるか。
 放射性物質は偏西風に乗って当然、日本にも飛来する。黄砂や微小粒子状物質「PM2.5」の被害をたびたび受ける北部九州での被害はまず免れないだろう。その恐怖は、石炭火力発電所の煤煙(ばいえん)や排ガスが主原因とみられるPM2.5の比ではない。
 中国は福島第1原発事故を教訓に、防潮堤や原子炉冷却用電源の高台移転などを進めたとしている。中国はすべて加圧水型軽水炉(PWR)を採用しており、沸騰水型軽水炉(BWR)だった福島第1原発事故と同じパターンの事故は起きにくいとされる。だが、中国は内陸部にも多数の原発が計画されている。中国全域の河川では慢性的に水不足が続いていることもあり、不測の事態は想定しておくべきだろう。
 にもかかわらず、情報開示はほとんど行われておらず、震災・津波対策の実態も定かでない。一般社団法人日本原子力産業協会は、毎年世界中の原発に安全対策や稼働率などを尋ねるアンケートを送付しているが、中国の原発からはいつも無回答。担当者はこうこぼした。
 「安全対策の全貌がほとんどつかめない国という印象です。実態解明が難しく実にもどかしい。正直言ってストレスがたまります」

核実験でも放射能汚染
 中国には前科がある。
 中国政府は1964年から1996年までの33年間に新疆ウイグル自治区で計46回の核実験を実施したと発表している。初回は1964年10月16日、東京五輪に合わせて実施された。しかも、これを含めて1980年までの23回は地表での核実験だった。
 
 
 度重なる核実験により、ウイグル族19万人以上が死亡、129万人以上が被曝したとされる。この時期、日本列島に中国から多量の放射性物質が飛来した。
 米国や旧ソ連が核実験を繰り返した1960年代、東京などでは、福島第1原発事故直後と同レベルの放射性物質が確認された。中国の核実験後も、防衛庁(当時)などの調査で大気や雨水の放射能汚染が確認されている。
 核実験が行われたウイグル自治区から北部九州までの距離は3800キロ。これに対し、原発ラッシュが続く中国沿岸部はわずか1000キロ前後しか離れていない。

作業員育成追いつかず
 さらに深刻なのは、原子炉の品質や安全管理・運営状態などをチェックする中国政府の体制が極めて貧弱とみられることだ。
 中国で原子力工学を専攻した学生の就職先には、序列がある。難易度が一番高く最も優秀な学生が希望するのは電力会社で原発の保守管理に携わる仕事。次が重電・プラントメーカーで原子炉設計などを担当する仕事だ。そして3番目が中国版原子力規制委員会である国家核安全局への就職だとされる。給料は電力会社の4分の1に過ぎず、その人数も定員(1千人)を大きく割り込んでいるという。中国原発事情に詳しいテピア総合研究所副所長の窪田秀雄はこう解説する。
 「中国は学生時代の序列がモノを言う社会です。当然、電力会社の社員は威張っており、国家核安全局の職員が『もの申せぬ』雰囲気であることは容易に想像できますよね…」
 
 実際、中国の専門家からは、国家核安全局がチェックすべき原子炉の部品について「品質にばらつきが大きく納期も安定しない」との指摘もあるという。主要部品の品質にばらつきのある原発が安全に稼働し続けることができるのか。
 しかも急増する原発に作業員の育成が追いついていないとの指摘もある。
 中国工程院が予測する2050年の原発の総出力は4億キロワット。出力100万キロワットの原発400基分となる。2013年1月末の既存原発は16基なので40年弱で25倍に増やす計算だ。
 現在の原発の運営・管理は、一部のエリートだけに許されたある種の「特権」であり、技術者や作業員も誇りを持って取り組んでいるようだが、400基となるとそうはいかない。人為ミスの確率も飛躍的に高まるだろう。
 2011年7月23日に温州市で起きた高速鉄道列車事故は記憶に新しい。日本や欧州、カナダなどの最新鋭技術を導入し、車両や地上設備、運行管理システムを構築したにもかかわらず、死者40人を出す惨事を招いた。中国政府は「落雷による先行列車の停車が事故原因だ」としているが、人為ミスを疑う声はなお絶えない。
 高速鉄道は、2008年の北京五輪、2010年の上海万博を見据えた中央政府の大号令を受けて急速に鉄道網を拡大させた。建造中にも「現場の技術者の教育が追いついていない」との指摘があった。
 石炭価格の高騰と大気汚染の深刻化を受け、政府の大号令により進む中国の原発ラッシュ。高速鉄道と同じ構図が浮かぶではないか。
 「急激な原発の建設により運転員の養成が追いつかなくなることは十分考えられます。中国政府は福島第1原発事故に関心は持っているようなので、中国での原発事故の防止に向けて、日中で福島の教訓を生かした取り組みを一緒にできたら、互いに有益ではないかと思います」
 窪田はこう語る。だが、相手は情報開示を徹底的に嫌う共産主義国家だ。沖縄・尖閣諸島をめぐる日中対立も深まっており、なかなかよい方向には進みそうもない。
 

関連ニュース

2013.2.15 01:01(1/4ページ)中国
 中国の旧正月にあたる「春節」を迎えた2月10日午前0時。中国の北京、上海などあらゆる都市や農村で一斉に花火が打ち上げられ、爆竹が鳴り響いた。深刻な大気汚染を受け、中国政府は爆竹・花火の自粛を求めたが、年に一度のお祝いはそう簡単にやめられない。例年よりやや控えめとはいえ、その煙はすさまじく、上海などは夜が明けても高層ビル群がかすんで見えないほど。多くの市民はゴーグルやマスクを身につけて新年を祝った。
 中国政府の発表によれば、中国都市部の1月中旬以降の大気汚染は深刻で、全人口の半分にあたる6億人が影響を受けたとされる。
 最も深刻なのは、微小粒子状物質「PM2・5」。直径2・5マイクロメートル以下の有害物質を指し、あまりに粒子が小さいため、通常のマスクは通り抜け、肺胞の奥深くまで入り込み、肺がんやぜん息など呼吸器系疾患を引き起こす原因とされる。
 日本にとっても他人事ではない。PM2・5は黄砂とともに偏西風に乗って日本に飛来しており、中国との距離が近い北部九州では国の環境基準値(1日平均で1立方メートル当たり35マイクログラム)を超えることもしばしば。健康被害への懸念が高まっている。
 こうした中国の大気汚染は、車の排ガスや工場の煤煙(ばいえん)に加え、石炭火力発電所が大きな原因を占めている。
 経済成長に伴い、中国の電力需要は拡大の一途をたどる。一般社団法人海外電力調査会のまとめによると、2011年の年間総発電量は4・72兆キロワット時に上り世界第1位。米国(4・10兆キロワット時)をしのぎ、日本の4倍以上に達した。
 その8割が石炭火力発電。日本と違い、有害物質を除去する脱硫装置を取り付けていないことが多く汚染物質はそのまま大気中に放出されている。
 
2012年11月に中国共産党トップの総書記に就任した習近平にとって大気汚染対策は大きな試金石だといえる。政権基盤が盤石ではない習近平がここで対策を誤れば、政権を揺るがす恐れもあるという。
●揺るがぬ原発計画
 「安全確保は前提だが、原子力発電は発展させる」
 北京で大気汚染が問題になり始めた2012年3月。中国首相の温家宝は全国人民代表大会(全人代)の政府活動報告でこう宣言した。日本で福島第1原発事故があってもこの政府方針に揺るぎがないことはこれで明確となった。
 この発言から半年後、中国政府は原発の建設再開を発表した。福島第1原発事故後、中国政府は新たな原発計画の審査や新規着工の認可を凍結していたが、「沿岸部での原発の立地は安全が確認された」として、むしろこれまでの遅れを取り戻すかのように急ピッチで認可に動き出した。
 同時に中国エネルギー政策白書(2012)では、原発を「持続可能な発展にとって必要だ」と断じた上でこううたった。
 「2015年までに非化石エネルギー発電の設備容量の割合を30%に引き上げる。中国はエネルギー分野の改革を確固として推進し、エネルギー生産・利用モデルの変革を推し進め、国家エネルギー安全を保障する」
 深刻な大気汚染と資源の枯渇を防ぐには原発推進しかない。中国政府の決意は揺るぎそうもない。
 
 
●1国で世界を上回る
 2013年1月末現在、中国で稼働中の原発は16基で総出力は1290万キロワット、全体のわずか1・8%に過ぎない。ちなみに日本の現存する原発50基(福島第1原発1~4号機を除く)をフル稼働させれば、総出力は4610万キロワットと中国の4倍近い。
 中国エネルギー政策白書によると、中国政府は2015年までに原発の出力を日本並みの4千万キロワットへ引き上げる目標を掲げた。これに向け、現在、原発29基(総出力3千万キロワット)を建設中だという。
 一般社団法人日本原子力産業協会によると、中国政府はさらに51基(同5980万キロワット)を計画中だ。その大半は冷却用に海水を取り込める沿岸部に集中する。福岡-上海間の距離は890キロしかない。つまり今後10年内に100基近くの原発が北部九州の東1000キロ前後に「雨後の竹の子」のように林立するわけだ。
 中国政府が認可した原発計画以外にも、その前段階として地方政府で認可または申請中の原発や、民間発電事業者による建設計画も少なくない。民間シンクタンク「テピア総合研究所」の調査では、こうした計画を含めると、すでに設置場所の決まった原発だけで273基(同2億8千万キロワット)もある。
 
 
 
  • 2    3   4
 
 
 

転載元: 海上保安、国土防衛、美しい日本を私たちが行動して守りましょう


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2268

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>