環境情報も「国家機密」、中国汚染拡大で晴れぬ視界
[北京/上海 10日 ロイター] 中国環境保護省は先月、土壌汚染に関する2年前のデータは「国家機密」だとして、弁護士のDong Zhengwei氏にアクセスは不可能だと宣告した。環境悪化に対する国民の怒りが高まる中、情報統制の厳しさが波紋を広げている。
ロイターのインタビューに応じたDong氏は、「この問題の本質は、環境保護という観点を超えている。これは、中国が長年抱えてきた政府の透明性の問題にかかわってくる」と指摘。「正当性がないのに盾として『国家機密』を使うべきではない」と非難した。
中国は通常、汚職や安全保障のような問題に関する情報は公開せず、国民が審査することを許していない。しかし、環境に対する国民の怒りによって、当局は要求を受け入れざるを得なくなるかもしれない。
<無言の殺人者>
Dong氏は先月、2006─10年に行われた全国調査で集められた土壌サンプルのデータの開示を求めたが、環境保護省は「国家機密」として拒否した。
中国政府は過去に、環境情報へのアクセスを求める国民からのプレッシャーに屈したことがあった。2012年初めには、北京の大気汚染への怒りが高まったことから、北京では微小粒子状物質「PM2.5」の観測情報の公開が始まった。
上海代表団のYan Chengzhong氏は、「PM2.5の情報公開前には議論が交わされた。大気の情報を公開することで、社会が混乱すると考えた人もいた」と香港の新聞に説明。「ただ、こういった事態は起こっていない。『知らないこと』だけがパニックを引き起こす」と述べた。
<代償伴う異議申し立て>
中国政府への異議申し立ては時に代償を伴う。
東部の浙江省の村で農業を営むChen Yuqianさん(60)は、約10年間にわたって土壌・水質汚染に抗議の声を上げてきた。この間、地元当局者の責任を追及してきたChenさんは、5回殴られたと打ち明けた。
2月20日、Chenさんは中国版ツイッター「微博」で、汚染した川を泳げば30万人民元(約460万円)の報酬を地元当局者に与えると挑戦状をたたきつけた。Chenさんによると、その4日後、棒や岩などを手にした十数人が自宅に押し入り、物を壊していったという。
Chenさんは「彼らは私に異議申し立てをやめさせ、汚染情報をこれ以上流させないために脅している」と語気を強めた。
Chenさんが住む村を管轄する地域の共産党書記は、ロイターの電話取材に襲撃犯との関連はないとし、襲撃事件は隣人との土地トラブルに関連していると主張した。
(原文執筆:Sui-Lee Wee記者、Adam Jourdan記者、翻訳:野村宏之、編集:梅川崇)
中国政府が実施した全国の土壌汚染状況調査について、北京の弁護士が結果の開示を求め情報公開を請求したところ、当局が「国家秘密」として拒否していたことが25日分かった。同日付の中国紙、法制日報が伝えた。
同紙によると、この弁護士は1月に全国の土壌汚染に関する調査の方法やデータの開示を環境保護省に請求。2月下旬に「データは国家秘密であり、規定により公開できない」との回答があったという。
弁護士は「深刻すぎて公開できないのだろう」と推測し「国民の生命に関わる問題。(開示拒否は)環境保護の意識を育てたり、汚染を改善したりする上で不利益だ」と批判した。
(共同通信)
同紙によると、この弁護士は1月に全国の土壌汚染に関する調査の方法やデータの開示を環境保護省に請求。2月下旬に「データは国家秘密であり、規定により公開できない」との回答があったという。
弁護士は「深刻すぎて公開できないのだろう」と推測し「国民の生命に関わる問題。(開示拒否は)環境保護の意識を育てたり、汚染を改善したりする上で不利益だ」と批判した。
(共同通信)